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年収5500万円から生活保護へ―元人気ブロガー立花岳志氏に学ぶフリーランス真実

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栄光から転落、そして見えた景色

かつて月間165万PVを誇るブログ「No Second Life」を運営し、年収5500万円という圧倒的な成功を収めていた立花岳志氏。ノマドワークを提唱し、多くの人に「働き方の自由」を示してきた彼が、2024年秋に生活保護を申請し、現在は自己破産手続き中であることを公表しました。

この衝撃的な転落劇は、フリーランスという働き方が持つ「光と影」を象徴的に物語っています。立花氏の経験から見えるフリーランスの収入の不安定さと、会社員の安定性について深く掘り下げていきます。

立花岳志氏とは―ブログで人生を変えた男

立花岳志氏は2008年、趣味で始めたブログが予想外の人気を博し、2011年に17年間勤めた会社を41歳で退職。「プロブロガー」として独立しました。当時、ブログだけで生計を立てるという働き方は画期的で、多くの人々に影響を与えました。

書籍の出版、セミナー開催、コンサルティング業務と事業を多角化し、最盛期には年収5500万円を達成。ポリアモリー(複数恋愛)という生き方も実践し、筋トレで鍛え上げた体と共に、自由で成功したライフスタイルの象徴として注目されていました。

なぜ転落したのか―収入激減の背景

広告収益モデルの崩壊

立花氏の収益の多くは、ブログからの広告収入に依存していました。しかし、インターネット業界の変化、特にSNSやYouTubeなどの台頭により、ブログの影響力は徐々に低下。読者離れが進み、広告収益は減少の一途を辿りました。

精神的な不調とうつ病

事業の不振と同時に、立花氏は深刻なうつ病に苦しんでいました。メンタルヘルスの問題は、ビジネスの判断力や行動力に直接影響します。「うつで厳しかったけれど、対外的にも自分的にもまだまだがんばる」と無理を続けた結果、心身ともに限界を迎えました。

資金繰りの悪化と負のスパイラル

2024年9月27日、クレジットカードの支払い日を前に、立花氏は完全に資金繰りが回らなくなりました。「心神喪失の状態」と本人が語るように、月末のキャッシュフロー確保に必死で土俵際まで追い詰められていたのです。

一度収入が減り始めると、フリーランスは容赦ない現実に直面します。固定費の削減が追いつかず、借入や分割払いに頼ることで負債が膨らみ、やがて返済不能に陥る。

これが負のスパイラルです。

フリーランスの収入が安定しない本質的理由

1. 収益源が限定的で脆弱

フリーランスの多くは、特定のスキルやプラットフォームに依存しています。立花氏の場合はブログでしたが、プラットフォームの変化、アルゴリズムの変更、市場トレンドの移り変わりに、個人は抗えません。

会社員であれば、営業部門が不振でも経理や製造など他部門が支えます。しかしフリーランスは一人で全てを担うため、主力事業が傾けば即座に生活に影響します。

2. セーフティネットの欠如

会社員には雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金という手厚い社会保障があります。失業しても失業手当が支給され、再就職までの猶予が得られます。

一方、フリーランスは国民健康保険と国民年金のみで、失業という概念すらありません。仕事がなくなれば即座に無収入です。立花氏も、最終的には生活保護という最後のセーフティネットに頼らざるを得ませんでした。

3. 病気やメンタル不調への脆弱性

会社員なら傷病手当金が支給され、休職しながら治療に専念できます。しかしフリーランスは働けなければ収入ゼロ。うつ病を抱えながらも「ビジネスを回す」ことを強いられる立花氏の状況は、多くのフリーランスが陥る罠です。

4. 固定費負担の重さ

成功時には高額な事務所費用、外注費、広告宣伝費などを投じて事業拡大を図ります。しかし収入が減少しても、固定費は容赦なく発生し続けます。規模を縮小する判断は心理的にも難しく、気づけば支出が収入を大きく上回る事態に陥ります。

5. 景気変動の直撃を受ける

企業は不況時でも既存社員を守ろうとしますが、外部委託や広告費は真っ先にカットされます。フリーランスは景気後退の最前線で打撃を受ける存在なのです。

会社員の「安定」とは何か―改めて考える価値

立花氏の事例は、逆説的に会社員という働き方の価値を浮き彫りにしました。

毎月確実に給与が振り込まれる安心感

どれほど当たり前に思えても、毎月決まった日に給与が振り込まれることは、人生の安定の土台です。住宅ローンを組める、子どもの教育計画を立てられる、将来を見通せる―この「予測可能性」こそが最大の価値です。

社会保障という見えない資産

健康保険料の半額を会社が負担し、厚生年金で将来の年金額が国民年金の約2倍になる。失業しても最長10ヶ月の失業手当。これらは年間数十万円から百万円以上の「隠れた報酬」です。

組織という後ろ盾

個人の能力や調子に波があっても、組織は継続します。病気で休んでも職場は存続し、復帰できる場所がある。立花氏のようにうつ病になっても、会社員なら休職制度が利用できました。

スキルアップと人脈形成の機会

会社は教育研修費を負担し、同僚や取引先との関係を通じて自然と人脈が広がります。フリーランスはこれらを全て自己負担・自己努力で構築しなければなりません。

自己破産手続き中の生活―立花氏の現在

立花氏は現在、鎌倉の自宅を引き払い、母親と同居しながら自己破産の手続きを進めています。生活保護を受給しながら、最低限の生活を送る日々です。

彼自身、「日本は、すぐに死なずに済む国なんだ」という新たな発見を語っています。絶望の中で見出したセーフティネットの存在。かつての成功者が「生きていける」ことの価値を実感している姿は、多くの示唆を含んでいます。

フリーランスを目指す人へのメッセージ

立花氏の経験は、フリーランスを全否定するものではありません。自由な働き方や大きな収入を得る可能性は、確かに魅力的です。しかし、それには相応のリスクが伴うという現実を直視すべきです。

独立前に準備すべきこと

  1. 最低1年分の生活費の貯蓄 ― 収入がゼロになっても耐えられる資金
  2. 複数の収益源 ― 一つの収入に依存しない事業設計
  3. 小規模スタート ― 固定費を最小限に抑え、身の丈に合った経営
  4. メンタルヘルスのケア ― 孤独と向き合い、相談できる人間関係の構築
  5. 保険の検討 ― 就業不能保険など、もしもの時の備え

会社員との「ハイブリッド」という選択

最近では副業を認める企業も増えています。会社員として安定収入と社会保障を確保しながら、副業でスキルを磨き収益化を試す。リスクを抑えながらフリーランス的な働き方を実現する道もあります。

「安定」の価値を見直す時代

立花岳志氏の年収5500万円から生活保護への転落は、決して他人事ではありません。フリーランス人口が増加する現代、誰もが同様のリスクを抱えています。

自由と引き換えに手放すものの大きさ。会社員という働き方が持つ、目に見えない価値。立花氏の経験は、私たちに「安定とは何か」を改めて問いかけています。

どのような働き方を選ぶにせよ、最悪のシナリオを想定し、リスクヘッジを怠らないこと。そして何より、心身の健康こそが最大の資産であることを忘れてはならない。

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