「家族が突然姿を消す」
これは日本において決して珍しいことではない。警察庁の統計によると、日本では年間約8万人もの人々に対して行方不明届が提出されている。
この数字は、1日あたり約220人が行方不明になっている計算となり、その背後には深刻な社会問題が潜んでいる。
日本における行方不明者の現状と実態をシラベテミタ!
統計で見る行方不明者の実態
年間約9万人という衝撃的な数字
警察庁の発表によると、近年の行方不明届受理数は以下のような推移を示している:
年間行方不明届受理数の推移
- 令和3年(2021年):79,218人
- 令和4年(2022年):85,000件前後
- 令和5年(2023年):90,144人
この「年間9万人」という数字について、行方不明者問題の専門家は重要な指摘をしている。
「行方不明者9万人」というフレーズはよく使われていますが、これはかなり大げさな数字です。令和5年は90,144人件の届け出がありましたが、そのうち約6万件は届け出から1週間以内に所在が確認されています。
実際に、およそ7割の行方不明者が1週間以内に所在確認等されているというのが現実です。
年齢別分析:多様化する行方不明の背景
年齢別の行方不明者分布は、社会の様々な問題を反映している:
令和5年の年齢別行方不明者数
- 20歳代:15,714人(最多)
- 10歳代:13,577人
- 80歳以上:12,706人
- 70歳代:10,242人
特筆すべきは、10代から30代の若年層で前年比2,664人の増加となっていることである。一方で、80歳以上の高齢者の行方不明も12,706人と高い水準にあり、認知症による徘徊が大きな社会問題となっている。
さらに深刻なのは、毎年、9歳以下の子供たちが、全国で1,000名以上も行方不明になっているという事実である。
認知症による行方不明、急増する高齢者
11年連続で最多を更新する深刻な現実
2023年の認知症行方不明者1万9039人、11年連続で最多を更新という事実は、日本の超高齢社会が直面する深刻な課題を物語っている。
認知症の行方不明者数は12年には9607人だったが、10年余りで約2倍に増えた。23年の水準は、1日あたり52件の届け出があるペースとなっており、この増加傾向は今後も続くと予想される。
年齢・性別による特徴
年齢別内訳(2023年)
- 80歳以上:11,224人
- 70歳代:6,838人
- 69歳以下:977人
この分布からは、70歳から行方不明のリスクが高まる傾向が読み取れる。
性別分布
- 男性:55.7%
- 女性:44.3%
男性の比率がやや高いものの、大きな性差は見られない。
発見状況と死亡率
2023年以前に届け出られた人も含めると、1万8221人が生存した状態で見つかっており、大半が3日以内に所在確認されている。
しかし、徘徊中に事故に遭ったり、具合が悪くなるなどして553人が死亡。認知症の行方不明者のうち、死亡が確認された割合は3%だったという事実は、早期発見の重要性を示している。
2024年の最新データでは、認知症やその疑いがあり、全国の警察に届け出があった行方不明者が、前年比918人減の1万8121人となったものの、依然として高い水準で推移している。発見時に死亡が確認されたのは549人で、死亡率は約3%となっている。
若年層の行方不明:家出と失踪の複合問題
20代が最多という現実
年齢別の家出・行方不明者では、20歳代が15,714人と最多となっている事実は、若年層が抱える深刻な社会問題を浮き彫りにしている。
若年層行方不明の特徴
- 就職や進学などの人生の転換期に発生しやすい
- 人間関係のトラブルが原因となることが多い
- SNSなどを通じた新たな人間関係への逃避
- 経済的困窮による家出
- 精神的な問題を抱えるケース
10代の深刻な状況
10代の行方不明者が13,577人に上るという事実も看過できない。この年代の行方不明には以下のような特徴がある
主な原因
- 家庭内暴力からの逃避
- 学校でのいじめ問題
- 進路や将来への不安
- インターネット上の人物との接触
- 家族関係の悪化
特に懸念されるのは、SNSやオンラインゲームを通じて知り合った見知らぬ人物との接触により、犯罪に巻き込まれるリスクが高いことである。
行方不明届の実態と隠れた問題
統計に現れない行方不明者
「家族が世間体を気にする」、「そんなに心配していない」などの理由で行方不明届を出していないケースもあり、統計にも現れない行方不明者がいる。
届出から発見までの期間
約6万件は届け出から1週間以内に所在が確認されているという事実から、行方不明者の多くは比較的短期間で発見されることがわかる。
しかし、残りの約2万5000人については、より長期間の行方不明状態が続いていることになる。
発見までの期間別内訳(推定)
- 1週間以内:約70%(約6万人)
- 1週間〜1ヶ月:約20%(約1万7000人)
- 1ヶ月以上:約10%(約8000人)
社会的背景と根本的要因
社会情勢の変化
日本における行方不明者問題は、現代社会が抱える様々な問題と密接に関連している
高齢化社会の進展
- 認知症患者の増加
- 家族介護の負担増大
- 地域コミュニティの結束力低下
若年層の社会問題
- 就職氷河期の影響
- SNSによる人間関係の複雑化
- 精神的ストレスの増加
家族関係の変化
- 核家族化の進行
- 単身世帯の増加
- 世代間コミュニケーションの希薄化
経済的要因
貧困問題との関連
- 経済的困窮による家出
- 多重債務からの逃避
- 就労困難による絶望感
住宅問題
- 住居確保の困難
- ホームレス状態への移行
- 一時的な避難としての失踪
予防対策と今後の課題
認知症高齢者への対策
地域包括ケアシステムの強化
- 認知症サポーターの養成
- 地域見守りネットワークの構築
- 早期診断・早期対応の推進
技術的支援の拡充
- GPS端末の普及促進
- IoT技術を活用した見守りシステム
- スマートフォンアプリの開発
若年層への支援
相談体制の充実
- 匿名相談窓口の設置
- オンライン相談システムの導入
- ピアサポート体制の構築
教育・啓発活動
- インターネットリテラシーの向上
- 人間関係構築能力の育成
- ストレス管理技法の教育
法制度の整備
個人情報保護との調整
- プライバシー保護と捜索活動の両立
- 情報共有システムの法的整備
- 家族の捜索権利の明確化
関係機関の連携強化
- 警察、自治体、民間団体の役割分担
- 情報共有システムの統一化
- 広域連携体制の構築
家族・社会への影響
家族への心理的影響
行方不明者を抱える家族は、長期間にわたって深刻な心理的ストレスを抱えることになる。
主な心理的影響
- 慢性的な不安と絶望感
- 罪悪感と自己責任感
- 社会的孤立感
- PTSD様症状の発現
経済的負担
- 捜索活動に伴う費用負担
- 収入機会の減少
- 医療費・カウンセリング費用
社会全体への影響
治安への不安
- 地域住民の不安感増大
- 社会全体の安全意識の変化
- 防犯対策コストの増加
労働力の損失
- 捜索活動による労働力の分散
- 家族の就労機会への影響
- 経済活動への間接的影響
まとめ
日本における年間約8万人の行方不明届という数字は、表面的には驚異的に見えるが、約7割が1週間以内に発見されるという事実がある一方で残りの3割、特に長期間行方不明となる約1万人の存在は深刻である。
特に注目すべきは以下の点である:
1. 認知症高齢者の行方不明急増
11年連続で最多を更新している認知症による行方不明は、超高齢社会日本が直面する最も深刻な課題の一つである。GPS技術の活用により全員生存での発見が実現しているものの、根本的な予防対策の強化が急務である。
2. 若年層の行方不明問題
20代が最多、10代も1万3000人を超える若年層の行方不明は、現代社会の構造的問題を反映している。SNS社会における新たなリスク、経済的困窮、家族関係の希薄化など、多面的なアプローチが必要である。
3. 統計に現れない隠れた問題
届出が出されていない行方不明者の存在は、実際の問題の規模がより大きい可能性を示している。社会の偏見や家族の心理的負担により、必要な支援が届かないケースへの対策も重要である。
今後の方向性
日本の行方不明者問題は、個人や家族の問題を超えて、社会全体で取り組むべきである。
高齢化社会の進展、若年層の社会問題の深刻化が予想される中、今こそ官民一体となった包括的な対策の推進が求められている。
一人でも多くの行方不明者が安全に家族の元に帰ることができるよう、社会全体での継続的な取り組みが必要である。そして何より、行方不明になる前の予防的な支援体制の構築が、この問題の根本的解決につながる最も重要な取り組みといえるだろう。


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