増加する「バックカントリー」遭難事故の実態
近年、日本の雪山で管理区域外を滑走する「バックカントリースキー」による遭難事故が急増している。特に深刻なのは、遭難者の約8割を外国人観光客が占めているという現実だ。パウダースノーを求めて世界中から訪れるスキーヤーやスノーボーダーたちが、日本の雪山の危険性を十分に理解しないまま管理外エリアに進入し、命を落とすケースも後を絶たない。
北海道のニセコエリアや長野県の白馬地域など、国際的に人気の高いスキーリゾートでは、この問題がより顕著になっている。パウダースノーの質の高さが世界的に評価される一方で、それが招く危険性についての認識不足が深刻な事態を引き起こしているのだ。
なぜ外国人観光客の遭難が多いのか
遭難事故の背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っている。
言語の壁による情報不足が第一の問題だ。スキー場に設置された警告看板の多くは日本語表記が中心で、英語や他言語での表記が不十分なケースも少なくない。「立入禁止」「危険」といった重要な警告が理解されないまま、観光客が管理外エリアに足を踏み入れてしまう。
次に、雪山に対する認識の違いも大きい。欧米のスキーリゾートでは、管理外エリアであっても一定の安全対策が施されている場所もあるが、日本では完全に自己責任のエリアとなる。この違いを理解しないまま、軽装備で入山する観光客が多い。
さらに、SNS映えを狙った無謀な行動も指摘されている。手つかずのパウダースノーを滑走する動画や写真をSNSに投稿したいという欲求が、危険な行動を後押ししているケースもあるようだ。
救助費用の実態―誰が負担しているのか
遭難事故が発生した場合、救助活動には多額の費用がかかる。ヘリコプター出動、捜索隊の人件費、装備費用など、1回の救助で数百万円から、場合によっては1000万円を超えることもある。
公的救助の場合、警察や消防による救助活動は基本的に税金で賄われる。つまり、日本国民の税金が外国人観光客の無謀な行動の尻拭いに使われているという構図だ。
一方、民間ヘリコプターを使用した場合は、原則として遭難者本人の負担となる。しかし、支払い能力がない場合や、帰国後に連絡が取れなくなるケースも報告されており、費用回収が困難な事例も少なくない。
長野県では、条例により登山者に対して救助費用の一部負担を求めることができるが、実際の回収率は低いのが現状だ。北海道ニセコ地域では、外国人観光客に対して山岳保険への加入を強く推奨しているものの、強制力はなく実効性に課題が残る。
ネットで広がる厳しい意見
この問題に対して、インターネット上では厳しい意見が相次いでいる。
「税金を使って外国人の無謀な遊びの救助をするのはおかしい」「救助費用は全額請求すべき」という声が多数を占める。特に、繰り返し事故が起きているにもかかわらず、抜本的な対策が取られていないことへの批判は強い。
一方で、「観光立国を掲げる以上、安全対策は日本側の責任」「多言語対応の看板設置など、やれることはまだある」といった冷静な指摘も見られる。
また、「保険加入を義務化すべき」「入山許可制にして、装備チェックを徹底すべき」など、具体的な対策を求める声も高まっている。
求められる実効性ある対策
この問題を解決するには、多角的なアプローチが必要だ。
まず、入山前の情報提供の徹底が挙げられる。スキー場での多言語対応の強化、レンタルショップでの安全教育、宿泊施設との連携による注意喚起など、観光客が危険性を認識する機会を増やすべきだろう。
保険加入の義務化も有効な手段だ。スイスやフランスなど、一部のヨーロッパ諸国では山岳保険への加入が義務付けられている。日本でも同様の制度を導入すれば、少なくとも救助費用の回収問題は改善される。
さらに、罰則の強化も検討に値する。管理外エリアへの無断侵入に対して、罰金を科すなどの措置を取れば、抑止力となる可能性がある。
長期的には、安全なバックカントリー環境の整備も一案だ。完全に禁止するのではなく、一定のルールと安全対策を施した上で、合法的に楽しめるエリアを設定することで、無秩序な入山を減らせるかもしれない。
観光振興と安全確保のバランス
日本のパウダースノーは世界的な魅力であり、インバウンド観光の重要な資源だ。しかし、その魅力が命の危険と引き換えになってはならない。
観光収入を得る一方で、安全対策のコストは税金頼みという現状は、持続可能とは言えない。地域経済が潤うのであれば、その収益の一部を安全対策に還元する仕組みも必要だろう。
外国人観光客を一方的に責めるのではなく、受け入れる側として何ができるかを真剣に考える時期に来ている。同時に、観光客側にも日本の雪山のルールと危険性を理解し、責任ある行動を求めなければならない。
雪山の美しさと恐ろしさは表裏一体だ。その両面を正しく伝え、悲劇を繰り返さないための実効性ある対策が、今こそ求められている。


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