介護保険料の全国格差が拡大、大阪市は月額9249円で最高額に
2024年4月から改定された65歳以上の介護保険料で、大阪市が月額9249円と全国最高額を記録しました。全国平均が6225円であることを考えると、約3000円も高い計算です。
一方、最も低い東京都小笠原村は3374円で、その差は実に2.74倍。年間にすると7万500円もの開きが生じています。
厚生労働省が発表した2024〜2026年度のデータによると、介護保険料は前期と比べて全国平均で3.5%増加し、過去最高を更新しました。制度が始まった2000年の全国平均2911円と比較すると、わずか24年で2倍以上に膨れ上がっています。
高齢化が進む日本では、介護サービスの利用者増加に伴い、保険料の上昇は避けられない状況です。しかし、なぜ大阪市がここまで突出して高いのでしょうか。
大阪市の介護保険料が高額になった3つの要因
要因1:独居高齢者の割合が突出して高い
2020年の国勢調査によると、大阪市では65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、一人暮らしの割合が45.0%に達し、全国平均の29.6%を大きく上回っています。この独居高齢者の多さが、介護保険料高騰の最大の要因です。
一人暮らしの高齢者は、家族の支援を受けられないため、比較的軽度の段階から介護サービスを利用せざるを得ません。訪問介護やデイサービスなど、日常生活を支えるサービスの需要が高まり、結果として介護給付費が増加します。
要因2:要介護認定率が全国平均より8ポイント高い
大阪市の2023年末時点の要介護認定率は27.4%で、全国平均より8ポイント高い水準です。大阪府全体でも23.1%と47都道府県で最高を記録しており、地域全体で介護ニーズが高いことがわかります。
要介護認定を受ける人が多いということは、それだけ介護サービスを利用する人が増えるということです。サービス利用者が増えれば、市全体の介護給付費も膨らみ、それを支える保険料も上昇せざるを得ません。
要因3:低所得者の割合が高く、保険料負担の構造的問題
大阪市では世帯全員が市民税非課税となる割合が49.3%と高く、全国平均の約1.5倍です。介護保険料は所得に応じた段階制になっており、低所得者は支払う保険料が少なくなる仕組みです。
しかし、介護サービスの総費用は変わらないため、低所得者が多い地域では、全体の保険料基準額を引き上げざるを得ません。高所得者の負担上限にも限界があるため、結果として中間層から低所得層まで幅広く保険料が上昇する構造になっています。
なぜ小笠原村の介護保険料は安いのか?
大阪市と対照的に、東京都小笠原村の介護保険料は3374円と全国最安値です。
その背景には、大阪市とは真逆の人口構造があります。
2010年時点で小笠原村の老齢人口割合は9.2%と全国の市町村で最も低く、生産年齢人口割合は75.7%で全国トップでした。人口約2600人の小さな村で、高齢者の絶対数が少なく、介護サービスの需要も限定的です。
離島という地理的特性もあり、若い世代が中心の人口構成が保たれていることが、低い保険料を実現する要因となっています。ただし、人口規模が小さい自治体は、今後の人口動態の変化によって保険料が大きく変動するリスクも抱えています。
大阪市の対策と今後の課題
大阪市は介護予防に力を入れており、高齢者の自主的な運動を促す取り組みを進めています。しかし、市の試算によると、現在の状況が続けば2040年度には保険料が月額9900円に達する見込みです。
和歌山県橋本市では、体操教室の開催など介護予防に注力した結果、要介護認定率が減少し、今回の改定で保険料を1000円引き下げることに成功しました。橋本市は介護給付費を抑制できたことと基金の取り崩しにより、保険料の引き下げを実現しています。
ただし、専門家は介護予防だけでは根本的な解決は難しいと指摘しています。高齢化が進めば、いずれは介護が必要になる人が増えるため、制度全体の見直しが必要です。
介護保険料の地域格差をどう考えるべきか
介護保険料の地域格差は、各自治体の高齢化率、独居高齢者の割合、要介護認定率、所得水準、介護施設の整備状況など、様々な要因が複雑に絡み合った結果です。
専門家は、保険料が高くてもサービスが充実していれば選択肢として成立するが、高齢者の年金が増えていない中で格差がどこまで許容されるかは本格的な議論が必要だと指摘しています。
大阪市民からは「なぜこんなに高いのか」という不満の声が上がっていますが、これは大阪市だけの問題ではありません。全国平均でも2040年度には月額9000円程度になるとの試算があり、介護保険制度そのものが岐路に立たされています。
持続可能な介護保険制度に向けて
大阪市の介護保険料が全国最高額となった背景には、独居高齢者の多さ、高い要介護認定率、低所得者の割合が高いという3つの構造的要因があります。一方、小笠原村の低額は若い人口構成によるもので、どちらも地域の特性を反映した結果と言えます。
介護予防の取り組みは重要ですが、それだけでは限界があります。今後は公費負担の見直し、サービス内容の効率化、利用者負担の在り方など、制度全体を見直す議論が避けられません。
大阪市の事例は、日本全体が数年後に直面する高齢化問題の縮図です。地域の実情に応じた柔軟な制度設計と、持続可能な社会保障制度の構築が、今まさに求められています。





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