はじめに
篠塚辰樹は1998年5月7日生まれ、茨城県神栖市出身のプロ格闘家で、元Krushフェザー級王者として知られている。ボクシングからキックボクシング、そして総合格闘技(MMA)へと渡り歩いてきた彼のキャリアは、日本格闘技界でも極めて異色だ。さらに、日本人初のBKFC(ベアナックル・ファイティング・チャンピオンシップ)参戦選手として、素手で殴り合うアメリカ発の過激な格闘技にも挑戦している。飄々とした破天荒なキャラクターと、リング上での精密な打撃技術のギャップが彼の最大の魅力だ。
ボクシングからキックボクシングへの転身
篠塚の格闘技人生は、中学2年生の時に先輩からの誘いでボクシングを始めたことから始まった。高校2年までに31戦24勝7敗という好成績を収め、アマチュアではインターハイベスト8に進出。その才能はプロの世界でも通用し、プロボクサーとして3勝(2KO)1敗の成績を残した。名門ワタナベジムでA級ライセンスを取得し、順調にキャリアを積んでいた。
しかし、試合機会に恵まれないことと、独特の不満が彼を次のステージへ導く。ボクシング会場の観客層と雰囲気に物足りなさを感じ、「倒しても会場があまり盛り上がらない」ことが理由で、2018年にキックボクシングへ転向した。この決断は、若さゆえの率直さと、エンターテインメント性を求める篠塚の本質を表している。
キックボクシングでの躍進
2018年2月、RISEでキックボクシングデビューを果たし、山川賢誠を1RでKO。ボクシング仕込みの鋭いパンチを武器に、キックボクシング界でも瞬く間に頭角を現した。2021年3月にはK-1に初参戦し、小澤海斗に勝利。同年12月、新美貴士のKrushフェザー級王座に挑戦したが、KO負けを喫し長期欠場を余儀なくされる。
この敗北が転機となった。篠塚自身が「もし勝ってたらあのまま調子に乗ってあんまり練習もせず、毎日酒を飲んでて、絶対に今の位置にいなかった」と振り返り、「あそこで負けてもう負けたくないって本気で思って、実際にそっから負けてない」と語っている。
2023年3月に復帰すると、林勇汰、佑典に連続KO勝利。同年10月には森坂陸を判定で下し、Krushフェザー級王座を獲得した。
RIZINでのベアナックル革命
日本格闘技界に衝撃を与えた素手ボクシング
2024年3月26日、篠塚はKrushのベルトを返上し、K-1グループを離脱。違約金を支払ってまで新天地を求めた。その先にあったのは、総合格闘技への挑戦と、アメリカ最大の素手ボクシング団体BKFCへの参戦だった。
2024年4月29日、RIZIN.46にてベアナックルルール(2分5R制)でBKFC所属のジャスティン・マルティネスと対戦し、1R1分33秒右ストレートでKO勝ち。グローブなしの素手で殴り合う過激なルールは日本では馴染みが薄かったが、篠塚のパフォーマンスは日本格闘技界に新たな風を吹き込んだ。日本人初のBKFC挑戦者として、RIZINにBKFCを持ち込む働きを見せたのである。
練習中の怪我により7月のBKFC本場でのアメリカ戦は欠場となったが、この挑戦は篠塚のキャリアにおける重要なマイルストーンとなった。
MMAデビュー戦 – ヒロヤへの敗北
東京ドームでの衝撃的な初陣
2025年5月4日、RIZIN男祭りで総合格闘技デビュー。朝倉未来1年チャレンジ出身のヒロヤと対戦し、1R2分11秒TKO負けを喫した。
試合は篠塚の左ストレートをヒロヤがかわして組みつきテイクダウンに成功すると、マウントポジションから鉄槌とヒジの連打で圧倒。打撃のスペシャリストである篠塚は、グラウンドでの防御を見せることができなかった。
しかし、この敗北は篠塚にとって良い経験となり、「いい経験です。ここで冨澤にサクッと勝って、来年ヒロヤにやり返します」と前向きに受け止めている。東京ドームという大舞台でのMMAデビューは、打撃の天才にとって組み技という新たな課題を突きつける結果となった。
盟友・平本蓮
クラブで始まった破天荒な友情
篠塚と平本蓮の出会いは、クラブで遊んでいる時に共通の知り合いを通じて偶然会ったことがきっかけだった。
平本は「その時から辰樹はぶっ飛んでて、会った日に酒の飲みすぎでぶっ倒れて緊急搬送された」と当時を振り返り、「次の日に連絡したら、点滴を打ってる写真が送られてきました。しかも両腕ね!」と笑いながら語っている。
この破天荒なエピソードが示す通り、二人は遊び友達として交流を深め、やがて練習パートナーとしても絆を築いていった。平本は「マジでおかしい人っすね。こいつもおかしかった」と評しながらも、篠塚の格闘技への適性を認めている。
剛毅會BLACK ROSEの一員として
現在、篠塚は平本蓮率いる剛毅會BLACK ROSEのメンバーとして活動している。2024年6月のRIZIN.47では、平本と共にリングに登場し、篠塚はBKFCアメリカ戦への意気込みを語った。
2024年3月には篠塚が何者かに襲撃される事件が発生し、平本が駆けつけた時には意識がない状態だったという深刻な出来事もあった。平本がSNSで情報提供を呼びかけるなど、二人の絆の深さがうかがえるエピソードだ。
格闘技の枠を超えて、私生活でも支え合う関係性は、篠塚のキャリアにおいて重要な要素となっている。
冨澤大智との因縁
RIZINデビュー戦からの因縁
2023年12月31日、RIZIN.45でRIZINデビュー。オープンフィンガーグローブ着用のキックボクシングルールで冨澤大智と対戦し、2度のダウンを奪い3-0の判定勝ちを収めた。試合前から舌戦を繰り広げていた二人だが、篠塚が圧倒的な実力差を見せつける結果となった。
2025年12月31日、両者はMMAルールで再戦することが決定している。篠塚は「MMAの経験値はあるかもだけど、アイツと俺じゃ生物的な強さが違う」と自信満々に語り、「MMAやって打撃が落ちたアイツには絶対に負けない」と断言している。
篠塚辰樹の魅力とこれから
篠塚辰樹の最大の魅力は、ボクシング、キックボクシング、ベアナックル、MMAと様々な格闘技に果敢に挑戦する冒険心にある。自身も「俺が見えている世界と他の選手が見ている世界は違う」と語るように、異色のキャリアが彼に独自の視点とスタイルをもたらしている。
飄々とした言動と、リング上での鋭い打撃技術のギャップ。遊び人のようなイメージと、ストイックな練習への姿勢。そして何より、ファンを楽しませることを最優先に考えるエンターテイナーとしての資質が、彼をRIZINの人気ファイターへと押し上げた。
ヒロヤへのリベンジ、冨澤大智との再戦、そしてMMAファイターとしてのさらなる成長。篠塚辰樹の格闘技人生は、まだ始まったばかりだ。破天荒な革命児は、これからも日本格闘技界を賑わせ続けるだろう。


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