「信号は青だった」両者が主張する衝撃的な事故の実態
2019年9月、神戸市須磨区で起きた交通事故は、道路交通における根本的な問題を浮き彫りにしました。阪神高速月見山オフランプを下りて青信号に従って西進していた女性ドライバーと、対向する下道を東進し青信号を見て右折した男性ドライバーの車が合流部で衝突したのです。
この事故の特異性は、双方のドライバーが「青信号に従って進行した」という点にあります。通常では考えられないこの状況が、実際に発生していたのです。
県の過失7割という異例の判断
女性は2023年3月に相手の男性ドライバーらに損害賠償を求めて提訴しました。しかし、男性側は信号機を設置した兵庫県側に一定の瑕疵があるとして、県に訴訟への参加を求めたのです。
神戸地裁で成立した和解案では、県の過失が7割とされ、兵庫県が約208万円を支払うことになりました。この判断は、信号機の設置者である行政の責任を明確にした画期的な事例と言えるでしょう。
なぜ両方の信号が青になったのか?
この事故が発生した背景には、信号機の設定に問題がありました。双方の信号が同時に青になる時間帯が存在したため、安全性が不十分だったと判断されました。
高速道路のオフランプから一般道への合流部という複雑な道路構造において、信号のタイミング制御が適切でなかったことが事故の主因となったのです。これは明らかな道路管理の瑕疵といえます。
残りの3割はなぜドライバーの過失なのか?
県の過失が7割という判断は、裏を返せば「3割はドライバー側の過失」という意味になります。なぜ信号機の欠陥で起きた事故なのに、ドライバーにも責任が問われるのでしょうか。
道路交通法上の注意義務
道路交通法では、青信号で進行する場合でも、ドライバーには周囲の安全を確認する義務があります。特に交差点や合流部では、他の車両の動きに注意を払い、危険を回避する責任が課せられているのです。
信号機への絶対的信頼の限界
「青信号だから絶対に安全」という考え方は、法的にも実務的にも認められていません。ドライバーは常に予測運転を心がけ、万が一の状況にも対応できる準備が求められます。
信号機が故障していたり、今回のように設定ミスがあったりする可能性を完全に排除することはできません。そのため、青信号でも慎重な運転が必要とされるのです。
過失相殺の法理
日本の民事裁判では、事故における各当事者の落ち度を総合的に判断する「過失相殺」という考え方が採用されています。今回のケースでは、信号機の欠陥が主要因であることは明らかですが、ドライバー側も合流部という危険な場所で十分な注意を払えば事故を回避できた可能性があると判断されたのです。
事故後の対応:再発防止への取り組み
兵庫県警は事故後、信号の設定を変更し、右折できないよう規制も変更しました。この迅速な対応は評価できますが、同時に「事故が起きてから初めて問題に気付いた」という事実も示しています。
全国の道路には、同様の潜在的リスクを抱える場所が存在する可能性があります。行政機関は定期的な点検と見直しを実施し、事故が起きる前に危険箇所を洗い出す必要があるでしょう。
あなたの身を守るための防衛運転術
この事故から学べる教訓は明確です。信号機を盲目的に信じるのではなく、常に周囲の状況を確認しながら運転することが重要なのです。
交差点・合流部での注意点
- 青信号でも減速し、左右の安全を確認する
- 特に複雑な交差点では、対向車や横断車の動きを予測する
- 高速道路の出口付近は速度差が大きいため、特に慎重に
- 「かもしれない運転」を徹底する
万が一の事故に備えて
ドライブレコーダーの装着は必須です。今回のような「両方が青信号」という特殊な状況では、客観的な証拠が事実関係の解明に不可欠となります。
信号機トラブルでの責任配分の現実
神戸市須磨区で発生したこの事故は、信号機の設置・管理者である行政機関も法的責任を負うことを明確にした重要な事例です。しかし同時に、青信号であってもドライバーには一定の注意義務があり、完全に無過失とは認められないという原則も示しました。
県の過失7割、ドライバーの過失3割という割合は、道路インフラの管理責任の重さを認めつつも、運転者自身の安全確認義務を否定しないという、バランスの取れた判断といえるでしょう。
私たちドライバーは、この事故を教訓として、信号機を含むあらゆる交通インフラが完璧ではないことを認識し、自らの安全は自ら守るという意識を持つことが大切です。青信号は「進んでよい」という許可であって、「絶対に安全」という保証ではないのです。
防衛運転の徹底こそが、あなた自身とあなたの大切な人を守る最良の方法なのです。


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