2025年に入り、中小企業の倒産が深刻な問題となっています。2024年の倒産件数は1万件を超え、2021年を底に増加傾向が続いています。この記事では、今まさに日本の中小企業を襲っている倒産増加の背景にある5つの主要因について、データと実例を交えながら詳しく解説します。
なぜ今、倒産が増えているのか?
2021年を境に倒産件数は増加傾向に転じ、2024年には約1万件に達しました。特に注目すべきは、2022年5月から35カ月連続で前年を上回るという異常な長期トレンドです。では、なぜこれほどまでに中小企業の経営が厳しくなっているのでしょうか?
原因1:深刻化する人手不足問題
「人がいないから倒産する」時代の到来
2025年1-9月の人手不足倒産は285件に達し、過去最多を記録しました。これは前年同期比で31.3%の増加です。特に深刻なのは、業績が悪くないにもかかわらず、従業員が確保できないために事業継続が困難になるケースです。
従業員の退職が直接的な原因となった倒産は、2025年1-7月で74件と前年同期から約6割増加しており、年間100件を超える見込みとなっています。
影響を受けている業界
- 自動車整備業:整備士不足により仕事を断らざるを得ない状況
- IT業界:システムエンジニア不足で案件を受注できない
- 建設業:有資格者の確保が困難で工事が進められない
- 派遣業:2025年1-5月で53件の倒産が発生し、過去最多ペース
人手不足は単なる採用難ではなく、「事業を回せない」という経営の根幹を揺るがす問題に発展しています。
原因2:物価高騰によるコスト増大
価格転嫁できない中小企業の苦境
原材料費や光熱費の上昇により企業のコストが大幅に増加し、特に中小企業ではこれらのコストを価格に転嫁することが難しく、収益悪化が深刻化しています。
2024年度の物価高倒産は925件となり、前年度の837件を上回り過去最多を更新しました。これは原材料、人件費、物流費、エネルギーなど、あらゆるコストが上昇している影響です。
なぜ価格転嫁が難しいのか?
全業種平均の価格転嫁率は40.6%にとどまり、全く価格転嫁できていない企業は1割を超えています。中小企業は取引先との力関係から、コスト増を価格に反映させることが困難です。その結果、利益が圧迫され、資金繰りが悪化して倒産に追い込まれるケースが後を絶ちません。
特に食品業界では原材料費の高騰に加え、物流費やエネルギーコストの上昇が負担となり、経営基盤の弱い企業で資金繰りが悪化し倒産に追い込まれるケースが増えています。
原因3:後継者不在による「あきらめ倒産」
事業承継の失敗が生む静かな危機
2025年1-9月の後継者難倒産は332件で、過去2番目の高水準となりました。これは単なる後継者問題ではなく、経営者の高齢化と若年層の流出が重なった構造的な問題です。
2025年問題の本質
2025年には国民の約5人に1人が75歳以上の後期高齢者、約3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。これにより、2025年の人材不足は約505万人に達し、2030年にはさらに644万人に増加すると予測されています。
経営者が高齢化し、事業を引き継ぐ後継者が見つからないまま廃業するケースが増加しています。特に地方の中小企業では、若年層の都市部への流出により、この傾向が顕著です。
原因4:ゼロゼロ融資の返済負担
コロナ支援の終了がもたらす重圧
コロナ禍で多くの中小企業が利用した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化しています。当時は救いの手となった融資も、今では重い返済負担として企業を圧迫しています。
金利上昇の追い打ち
2025年も追加利上げが予想され、借入金利の上昇が中小零細企業の経営をさらに圧迫すると懸念されています。本業の収益回復が遅れている企業にとって、返済と金利負担の増加は死活問題です。
利益で借入金の利息が賄えず、政府や金融機関の支援で延命を続けてきた推計20万社超の「ゾンビ企業」の淘汰がさらに進むと指摘されています。
原因5:販売不振と消費低迷
需要減少の二重苦
2024年度の倒産主因の82.0%は販売不振でした。物価高騰は企業のコストを増やすだけでなく、消費者の購買力も低下させるため、売上減少という二重の打撃を与えています。
業界別の厳しい現実
- 小売業:大手商業施設やECサイトとの競争激化
- 製造業:海外企業との競争と原材料価格高騰の板挟み
- サービス業:人件費高騰により価格競争力が低下
物価高と消費の低迷により個人消費が伸び悩んでいます。消費者が財布の紐を締める中、中小企業の売上回復は難しい状況が続いています。
倒産を回避するために経営者がすべきこと
早期の経営状況把握と改善
財務状況を定期的にチェックし、問題の兆候を早期に発見することが重要です。資金繰りが厳しくなる前に、専門家への相談や公的支援の活用を検討しましょう。
事業承継の計画的な準備
後継者不在は一朝一夕に解決できる問題ではありません。早期に事業承継を計画し、適切な準備を進めることで、経営の安定性を確保し倒産リスクを回避できます。
DX推進による生産性向上
人手不足を補うには、デジタル技術の活用による業務効率化が不可欠です。IT導入補助金などの支援制度を活用し、生産性向上に取り組みましょう。
価格転嫁の交渉と固定費削減
コスト増を価格に反映できるよう、取引先との丁寧な交渉が必要です。同時に、無駄な固定費の削減も進めましょう。
公的支援の積極的活用
中小企業活性化協議会など、事業再生を支援する公的機関の活用も検討すべきです。政府は中小企業の早期事業再生に必要な支援体制の強化に向けた「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」を公表しています。
2025年は正念場の年
2025年の中小企業を取り巻く環境は、複数のリスク要因が複合的に影響し合う厳しい状況です。人手不足、物価高、後継者難、賃上げ圧力など、中小零細企業の「あきらめ倒産」「あきらめ廃業」が一段と広がる可能性があります。
しかし、早期に具体的な対策を講じることで、倒産リスクを軽減することは可能です。現状を正確に把握し、必要な支援を受けながら、柔軟に環境変化に対応していくことが、この困難な時期を乗り越える鍵となるでしょう。
経営者の皆様には、「まだ大丈夫」と楽観視せず、今すぐ行動を起こすことをお勧めします。2025年以降も安定した経営を続けるために、できることから始めていきましょう。


コメント