2005年に起きた衝撃の移籍劇
日本ボクシング界に旋風を巻き起こした亀田興毅。その快進撃の裏には、2005年4月に起きた大阪のグリーンツダジムから東京の協栄ジムへの電撃移籍がありました。移籍金3000万円という高額な金額が話題となったこの移籍劇には、どのような背景があったのでしょうか。
グリーンツダジムとの決別
亀田興毅がプロデビューしたのは2003年。地元大阪の名門グリーンツダジムで着実にキャリアを積み上げていました。しかし、わずか1年半後の2005年4月、突如として東京の協栄ジムへの移籍が決定します。
この移籍には驚くべき経緯がありました。グリーンツダジム側は当初、亀田の本人確認もないまま「最低落札額3000万円からの入札移籍」を公表。これに亀田側が強く反発し、日本ボクシングコミッション(JBC)に相談する事態となりました。
JBCは「本人の意思を重視するように」とグリーンツダジムに指示。結局、入札形式は取りやめとなりましたが、最終的に協栄ジムが3000万円の移籍金を支払い、亀田興毅の移籍が実現しました。
なぜ協栄ジムだったのか
協栄ジムといえば、帝拳ジムに次いで日本で2番目に多い世界王者を輩出している名門中の名門です。当時の会長・金平桂一郎氏は日本ボクシング界の重鎮として知られ、数々の世界王者を育て上げてきた実績がありました。
亀田興毅が協栄ジムを選んだ理由は明確でした。世界チャンピオンを目指すには、より大きな舞台と充実したサポート体制が必要だったのです。協栄ジムは東京という地の利、豊富な資金力、そしてメディア対応のノウハウを持っていました。
移籍に伴って亀田一家は大阪から上京。この頃からTBSをはじめとするメディアが本格的に亀田親子を取り上げるようになり、「亀田ブーム」の土台が築かれていきます。
父・亀田史郎の存在は移籍に影響したのか
亀田興毅の父・史郎は、息子たちを世界チャンピオンにするという強い信念を持ち、独自のトレーニング方法で三兄弟を育て上げました。この移籍劇において、史郎の意向がどこまで働いていたのかは、多くのボクシングファンの関心事でした。
実は、当時のグリーンツダジムには深刻な財政問題が存在していました。移籍騒動の直後、同ジムの別の選手・高山勝成がファイトマネー未払いを訴える事件が発生。調査の結果、グリーンツダジムには4200万円ほどの負債があることが判明しました。
このような状況下で、亀田史郎が息子の将来を考えて、より安定した大手ジムへの移籍を望んだのは自然な流れだったといえるでしょう。父としての判断が、結果的にこの移籍を後押しした可能性は十分にあります。
3000万円の移籍金の意味
当時報道された3000万円という移籍金は、日本のボクシング界では異例の高額でした。これはグリーンツダジムが当初設定した「最低落札額」がそのまま移籍金として設定されたものです。
この金額は、亀田興毅という選手の将来性と商業的価値を示すものでした。協栄ジムはこの投資を惜しまず、亀田を世界チャンピオンに育て上げることを目指しました。結果として、亀田興毅は移籍翌年の2006年に世界王座を獲得し、協栄ジムの期待に応えることになります。
移籍後の軌跡と後の確執
協栄ジム移籍後、亀田興毅のキャリアは順調に進みました。しかし、その後亀田家と協栄ジムの関係は必ずしも良好とは言えませんでした。
2008年、亀田史郎はテレビ番組で協栄ジムとの間にファイトマネー未払い問題があったと発言。ジム側との確執が表面化します。最終的に亀田三兄弟は協栄ジムを離れ、2008年に独自の「亀田ジム」を設立することになりました。
この後も亀田家は様々な騒動に巻き込まれますが、グリーンツダジムから協栄ジムへの移籍は、亀田興毅が世界の舞台へ飛躍するための重要なステップだったことは間違いありません。
移籍が意味したもの
亀田興毅のグリーンツダジムから協栄ジムへの移籍は、単なるジム変更以上の意味を持っていました。
- 世界を目指す若手選手が、地方の中堅ジムから大手名門ジムへステップアップした典型例
- 3000万円という高額移籍金は、選手の商業的価値を示す指標となった
- 父・史郎の強い意向と、息子の将来を案じた親心が移籍を後押しした
- グリーンツダジムの財政難という背景事情も移籍の一因となった
この移籍から約1年後、亀田興毅は世界王座を獲得。協栄ジムでの経験は、彼のボクサー人生において重要な転機となりました。父・史郎の判断が正しかったのかどうかは評価が分かれるところですが、少なくとも興毅を世界チャンピオンに導いたという点では、この移籍は成功だったといえるでしょう。
現在、亀田興毅は引退後プロモーターとして活動し、2021年には地元大阪にボクシングジムを開設。皮肉にも、そのジムで指導の中心を担うのは、かつてグリーンツダジムで亀田三兄弟と練習を重ねた経験を持つトレーナーです。
原点回帰ともいえるこの展開は、ボクシングという世界の不思議な縁を感じさせます。


コメント