ボクシングだけでなく格闘技は階級制度で行われている。階級が細かく分けられているのは、公平性の確保と選手の安全保護。階級が1階級違うだけで圧倒的なアドバンテージになります。
現在、スーパーバンダム級の四団体統一王者の井上尚弥でさえも1階級、2階級上げるだけで厳しい戦いが予想され、スーパーバンダム級でKOを量産していても確実にKOは減るでしょう。
それほど、格闘技において体重差はアドバンテージになるのです。
日本ボクシング界には約14キロの減量をして世界チャンピオンになった人物がいる。
日本ボクシング界のレジェンドチャンピオン、ファイティング原田。
壮絶な減量エピソードが漫画「あしたのジョー」の力石徹のモデルになったことでも知られているファイティング原田についてシラベテミタ!
ファイティング原田の減量地獄
ファイティング原田(1943年4月5日生まれ)は、元WBA世界フライ級王者、元WBA・WBC世界バンタム級統一王者として、世界2階級制覇を達成した日本ボクシング界のレジェンドです。
しかし、彼がチャンピオンになった裏には、想像を絶する減量地獄との戦いがありました。
元々、原田は体重が増えやすい体質だったこともあり、減量との戦いがつきまとっていた。その減量の過酷さは常軌を逸しており、彼の日常的な体重は65キロ前後でしたが、フライ級のリミットは約50.8キロ(112ポンド)です。つまり、約14キロもの減量を強いられることになった。
これは体重の20%以上にも及ぶ、まさに命がけの減量でした。
試合が近づき減量が始まると、原田が水を飲めないようにするため、ジムの水道の蛇口はすべて針金で固定されるという徹底した管理が行われました。トイレの水すら飲みたくなるような減量地獄を乗り越え、原田はリングに立ち続けた。
針金で水道の蛇口を縛るエピソードは、原田の減量がいかに極限状態であったかを物語ってる。水分摂取を完全にコントロールするため、ジム関係者が原田を24時間監視し、少しでも水を口にしないよう徹底的に管理していたのです。
原田は後にこの時期を振り返り、「トイレの水が美味しそうに見えた」と語っています。
減量期間中の原田は、一日の食事がりんご半分だけという日もありました。激しいトレーニングを続けながら、極限まで食事と水分を制限する生活。体重計に乗るたびに一喜一憂し、100グラムの増減に神経を尖らせる日々。
さらに過酷だったのは、減量の最終段階でした。試合前日の計量に向けて、原田はサウナスーツを着込んで長時間ランニングをし、最後の水分を絞り出していました。脱水状態で意識が朦朧とする中でも、目標体重に到達するまで減量を続けたのです。
「あしたのジョー」力石徹への影響
「あしたのジョー」の作者ちばてつやは、「力石の地獄の減量で、原田選手のエピソードを参考にさせてもらった」と明言している。原田の減量エピソードは漫画『あしたのジョー』の力石徹の減量シーンで採用されているのです。
力石徹は、主人公矢吹ジョーと同じバンタム級で戦うために、本来の階級であるウェルター級から大幅な減量を敢行します。作中では、力石の体格から考えて15キロ以上の減量が必要とされ、まさに原田の実体験と重なる設定でした。
漫画の感動的な名場面で、減量に苦しむ力石の姿を見かねたヒロインの白木葉子が、冷たい水は体に悪いからと白湯を差し出すと、力石は一度は飲もうとしたこの白湯を捨てて「お嬢さん、そのお気持ちだけありがたく飲ましていただきます」と語ります。この針金で水道の蛇口を縛るという話は、いつも減量に苦しんでいたファイティング原田の実話からヒントを得たものでした。
力石の減量シーンは、読者に強烈な印象を与えました。骨と皮だけになった力石の姿、水を求めてさまよう描写、そして最終的に減量の影響で試合後に命を落とすという展開は、原田の実体験の過酷さを物語としておさめたものでした。
原田の場合、幸い命に関わる事態は避けられましたが、減量によって体調を崩すことは日常茶飯事。極端な脱水状態により、試合中にふらつくこともあり、減量の影響で本来の実力を発揮できない試合も少なくありませんでした。
現代への影響と教訓
原田の極端な減量は健康面から問題視されるが、原田の時代は減量も実力のうちとされ、どれだけ過酷な減量に耐えられるかが選手の資質として評価されていた。その極限状態を乗り越えて世界チャンピオンの座を掴んだのです。
原田の減量エピソードは、一人の男が夢を実現するために、文字通り命を削って戦った証であり、その精神力と執念が「あしたのジョー」の力石徹のモデルになり、多くの人々の心に刻まれることになった。
計量時の体重超過について、昔は、外国人選手の方が体重超過の頻度が高い傾向にあったが、現在は日本人の体重超過がちらほら見られる。世界チャンピオンですら体重を守れず王者剥奪されるケースもあるくらいです。
日本人は勤勉で真面目というイメージで、きっちりと体重を合わせるのは残念ながら昔の話かもしれません。


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