「10回やって1回勝てるかどうか」──それでも彼は言い切った
「”死んでもいい”ってくらいの覚悟でリングに上がる」
プロ格闘家歴21年。K-1、GLORYで世界を制した男が、自ら認める絶望的な勝率を口にしながら、それでも前を向いた。
4月12日(日)、福岡・マリンメッセ。RIZIN LANDMARK 13 in FUKUOKAのメインイベントで、久保優太はRIZINフェザー級の絶対王者・ラジャブアリ・シェイドゥラエフに再び挑戦する。
これはただのタイトル戦ではない。プライドと尊厳をかけた、一人の格闘家の”魂の叫び”だ。
試合概要 RIZIN LANDMARK 13 in FUKUOKA
2026年4月12日(日)、マリンメッセ福岡A館で開催される「大和開発 presents RIZIN LANDMARK 13 in FUKUOKA」。そのメインイベントには、フェザー級タイトルマッチとしてラジャブアリ・シェイドゥラエフ対久保優太が組まれた。 SPICEチケットは完売、B館でパブリックビューイングが実施されるほどの注目度だ。
この一戦が決まった経緯も異例だった。RIZINの榊原信之CEOが「日本人選手でタイトルマッチに臨みたい選手は名乗りを挙げてほしい」と呼びかけ、それに応じたのが久保だった。 Yahoo!ニュースいわば”名乗り制”で掴んだタイトル挑戦。なぜ久保だったのか──その答えは、彼のキャリアと覚悟の深さにある。
王者シェイドゥラエフの”異常な強さ”
ラジャブアリ・シェイドゥラエフ。キルギス出身、現在MMA18戦無敗。この数字だけで十分すぎるほど恐ろしいが、問題はその”勝ち方”にある。
シェイドゥラエフは昨年5月の東京ドーム大会でクレベル・コイケを破り王座を獲得すると、9月のビクター・コレスニック、大晦日の朝倉未来に続き、今回で3度目の防衛戦となる。いずれも1ラウンドでのフィニッシュ。クレベル・コイケを秒殺し、朝倉未来すら2分54秒でTKOに下した。
圧倒的なフィジカルと完成度の高い総合力を誇る王者に対し、識者の多くが「穴がない」と断言する。打撃も組み技もトップレベル。格闘技ファンが「これは無理ゲーでは?」と思うのは至極当然だ。
久保優太が語った”勝率1割”の現実
久保は公開練習後の質疑応答でこう認めた。「確かに皆さんが思うように分は悪いかもしれない。まあ10回やって1回勝てるか勝てないかじゃないですか? でもその1回を僕は4月12日に全力で引きに行こうと思います」
自分の口から「勝率1割」を認める格闘家がいるだろうか。それだけシェイドゥラエフが規格外の存在であり、それでも逃げない久保の”無謀さ”が際立つ。
前戦(2024年大晦日)でも格上相手に立ち向かった久保だったが、シェイドゥラエフのグラウンドでのパウンド、鉄槌、ヒジといった強烈な打撃で顔面は傷だらけ。鼻骨骨折、歯も折れるなど大きなダメージを食らった。 それが「普通の人間」なら二度と戦いたくない相手だ。
それでも挑む理由|”死んでもいい覚悟”の正体
久保はこう言い切った。「”死んでもいい”って言ったら言葉は悪いけど、それぐらいの覚悟で僕はリングに上がっているし、シェイドゥラエフはそれぐらい危険な相手」
これは比喩ではない。本気だ。
「21年間プロをやってきて、本当にシェイドゥラエフは過去最強の相手だと思うし、今回の試合は僕のプロ生活の集大成になってくると思っています」
21年間。K-1世界王者、GLORY世界王者、そしてMMAへの転向──紆余曲折の格闘人生の全てを賭けた一戦。勝率など関係ない。この男にとって、リングに上がること自体が”答え”なのだ。
前回対戦の”トラウマ級敗北”
久保は前回の敗戦についてこう振り返った。「前回はあれだけボコボコにされて、自分の格闘技人生を否定された試合だったので、悔しくて練習しまくってきた。あの試合以来、強くなることしか考えていなかった」
試合後は「1カ月くらい船酔いしているような感じ」が続き、「元旦は車椅子を押されていた」という。 鼻骨骨折、歯折れ、脳へのダメージ。
肉体的にも精神的にも、キャリア最大の屈辱だった。
だが久保はここで終わらなかった。この敗北が、むしろ彼を次のステージへと押し上げた。
久保の進化|”2割増し”の意味
久保は公開練習で重いパンチと重い左ローを見せ、最後はその左ローで弟の賢司氏を吹っ飛ばすなど順調な仕上がりぶりをアピール。「大晦日のダウトベック戦からはパンチも蹴りも2割増くらい。前回のようにはならないと信じている」と自身の成長に手応えを語った。
さらに興味深いのが、久保自身の”勝算”の推移だ。「前回が10%ぐらいだとすると、3月中旬時点で60%はある。残り1カ月でそれを70%まで持っていく日々」と語り、戦いのたびに確実に勝算を積み上げてきた。
シェイドゥラエフがその後に戦ったクレベル・コイケ、ビクター・コレスニック、朝倉未来との試合を全て分析し尽くした久保。「もしかして……」と思わせる仕上がりが、そこにある。
シェイドゥラエフ攻略の可能性
「シェイドゥラエフの穴という穴ではないが、攻略できるなって感じました。準備は万端です」
久保はそう言い切る。
久保の勝ち筋はシンプルかつ明快だ。「立っていたら僕の勝ち、寝たら向こうの勝ち」
K-1・GLORYで世界一になった打撃技術を最大限に活かし、グラウンドに持ち込まれる前に勝負を決める。
朝倉未来の試合の2分54秒の攻防からも「惜しかった部分がある」とシェイドゥラエフ攻略のヒントを見い出している久保。スタンドで打撃を当て続け、一瞬の隙を突く──それが「10回に1回」を「今日の1回」に変える唯一の道だ。
この試合は”勝敗以上の戦い”
もし久保が勝てば、RIZIN史上に残る大番狂わせ。そしてMMA転向後の苦難の全てが報われ、日本格闘技界の頂点に立つ。
負ければ──二度の完敗。キャリアの終焉も、現実として迫ってくる。
「最後の1分1秒まであきらめずに勝ちにいって、最後、僕がチャンピオンになれたらいいなという覚悟」
これが久保優太という男の生き様だ。勝率1割でもリングに上がる。格闘技が、人生そのものだから。
まとめ ”奇跡”か、”現実”か
勝率1割でも挑む理由は、プライドと再証明への渇望だ。「自分の格闘技人生を全否定された」あの夜から約1年4カ月。久保優太はこの一戦に全てを注ぎ込んできた。
4月12日、福岡の夜。18戦無敗の絶対王者に、21年のキャリアを賭けた挑戦者が立ち向かう。
果たして奇跡は起きるのか、それとも王者の強さが現実を語るのか。


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