2026年2月21日午後10時15分、岡山市東区の西大寺観音院で毎年恒例の「西大寺会陽(はだか祭り)」が開催されるなか、締め込み姿の男性3人が裸群の中から相次いで発見され、意識不明の状態で救急搬送されるという衝撃的な事態が発生した。
事件の概要——何が起きたのか
搬送されたのは、岡山市北区在住の58歳男性、岡山市東区在住の47歳男性、岡山県美作市在住の42歳男性の計3人。いずれも宝木(しんぎ)の争奪戦に参加していた最中のことだった。
西大寺会陽の最大の見せ場である「宝木争奪戦」は、真夜中の本堂から投下される2本の霊木・宝木をめぐり、数千人規模の締め込み姿の男たちが一斉に奪い合う場面だ。宝木を手にした者には「福男」としての栄誉と、その年の福が訪れると言い伝えられている。今年も数千人の裸衆が境内に集まり、熱狂的な争奪戦が繰り広げられた。
しかしその熱狂の渦の中で、3人の男性が倒れているのが発見された。真冬の夜、裸衆が密集する極限の環境の中では、転倒や将棋倒し、あるいは低体温・過呼吸といったリスクが常につきまとう。発見時にいずれも意識がなかった3人は、その場で救急処置を受けたのち病院へ搬送された。
西大寺会陽とはどんな祭りか——基礎知識をおさらい
「西大寺会陽」は岡山県岡山市東区の西大寺観音院で毎年2月の第3土曜日に開催される、約500年の歴史を持つ伝統行事だ。「日本三大奇祭」のひとつにも数えられ、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。
深夜0時(旧暦正月13日)の「投げ木(なげぎ)」の瞬間、住職が本堂から宝木を投下すると、境内を埋め尽くした数千人の裸衆が一斉に飛び込む。観衆を含めると毎年数万人が訪れるとも言われ、岡山を代表する冬の風物詩として全国的にも知名度が高い。
参加者のほとんどは白い締め込み(ふんどし)のみの着用が原則で、真冬の寒空の下、肌を密着させながら宝木をめぐって激しく競い合う。その迫力ある映像はテレビや海外メディアにも度々取り上げられ、近年は外国人観光客の姿も増えている。
なぜ危険なのか——裸祭り特有のリスク
今回の事故を受けて改めて注目されるのが、裸祭りが内包するリスクの大きさだ。
まず挙げられるのが群衆圧力(クラッシュ)のリスクだ。数千人が密集した状態で一方向に向かって動くため、転倒した人が踏みつけられたり、周囲の圧力で身動きが取れなくなるケースがある。2010年代以降、世界各地のイベントで群衆事故が相次いだことで、このリスクへの関心は高まっている。
次に低体温症・体力消耗の問題がある。2月の夜間は気温が一桁台になることも多く、締め込み一枚の状態で長時間屋外に立つだけでも身体への負担は大きい。争奪戦が始まれば激しい接触が続くため、体力のある若者でも消耗は激しい。今回搬送された3人の年齢が42歳・47歳・58歳という40〜50代であったことも、身体的なリスクとの関連で注目される点だ。
ネットの反応——SNSで広がった声
今回の搬送事故はSNS上でも瞬く間に拡散し、さまざまな声が上がった。
「伝統を守りつつ安全対策を」という意見が目立った一方、「毎年こういうリスクがあると知りながら参加するのが裸祭りの醍醐味」「意識不明になってしまったのは気の毒だが、祭り自体を否定するのは違う」という参加者目線の声も根強くあった。
X(旧Twitter)では「西大寺会陽」「裸祭り 意識不明」がトレンド入りし、地元岡山の人々からは「早く回復してほしい」という祈りのコメントが多数投稿された。また、「500年続く伝統行事だからこそ、安全基準を現代に合わせてアップデートしてほしい」という冷静な提言も少なくなかった。
一方で「毎年危ない目に遭う人がいるのに、なぜ今まで抜本的な対策がなかったのか」という批判的なコメントも一定数見られた。海外メディアの報道も相次ぎ、「Japan’s naked festival incident」として英語圏のニュースサイトでも取り上げられた。
安全管理の観点から——祭りの今後に問われること
西大寺会陽はこれまでも参加者の怪我や体調不良の報告はあったものの、今回のように3人が同時に意識不明となる事態は異例だ。祭りの主催者側・観音院側は安全管理体制についての見直しを迫られることになるだろう。
すでに近年では、参加者の健康状態の自己申告制度や、医療スタッフ・救護テントの設置が行われていたと伝えられている。しかし群衆の密度や興奮状態の中では、倒れた人の発見が遅れることも課題のひとつだ。
今後の対策として考えられるのは、参加人数の上限設定、医療スタッフの増員と配置の最適化、そして入場時の体調チェックの厳格化などだ。伝統行事と安全管理のバランスをどう取るか——これは西大寺だけでなく、全国各地の危険を伴う伝統行事共通の問題でもある。
伝統と安全の両立という課題
約500年の歴史を誇る西大寺会陽・裸祭り。宝木をめぐる争奪戦の熱狂は、日本の冬を象徴する風景として多くの人に愛されてきた。しかし2026年の今回、3人が意識不明となる事態は、改めて祭りの安全管理について社会全体で考えるきっかけを与えてくれた。
搬送された3人の一日も早い回復を願うとともに、500年の伝統が次の500年も続いていくために何が必要か——主催者、参加者、そして観覧者を含めたすべての関係者が、真剣に向き合うべき問いが突きつけられている。


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