気づけば財布の中身が軽くなっている。コンビニで昼食を買うたび、レジで表示される金額に驚く人が増えています。おにぎりや弁当を購入し、サラダや飲み物を追加すると会計時に1000円を超えるケースが増加しており、消費者の間で「コンビニ離れ」が加速しているのです。
止まらないコンビニ食品の値上げラッシュ
2026年1月、セブンイレブンはおにぎりの一部を最大28円値上げし、塩むすびは108円から128円に、北海道産昆布おにぎりは128円から150円になりました。弁当類についても最大60円の値上げを実施しています。
海苔の価格は2年間で約1.4倍に上昇しており、米価格の高騰も追い打ちをかけています。米価は2021年に1万2804円だったものが2024年産では2万3191円と、3年前と比べて約2倍に跳ね上がっています。
ファミリーマートも例外ではありません。2025年6月には約50品目を対象に平均5%の値上げを実施し、業界全体で値上げの波が押し寄せています。
「1000円の壁」が消費者心理を変えた
かつて500円前後で済んでいたコンビニランチが、今や1000円近くになるケースが増えています。弁当が500~700円で、それにサラダや飲み物をプラスすると1000円を超えてしまい、会計時に驚く経験をした消費者が増加しています。
この「1000円の壁」は、消費者の購買行動を大きく変えました。「1000円出すならスーパーの弁当のほうが安い」「いっそ外食したほうがマシ」という声が広がり、コンビニから足が遠のく人が続出しています。
実際、スーパーでは300~400円の弁当が購入でき、サラダを追加しても合計500円程度で済むため、コンビニからスーパーに乗り換える消費者が増えています。夕方の時間帯には値引きされた商品もあり、賢い買い物を志向する消費者にとって、コンビニの価格設定は割高に感じられるようになったのです。
データが示すコンビニ離れの実態
統計データも「コンビニ離れ」を裏付けています。コンビニの来店客数はコロナ前の水準に戻っておらず、客単価の上昇で売上を維持している状態です。つまり、客数は減っているものの、一人あたりの購入金額が増えることで売上を確保しているのが実情です。
特に若年層の離脱が顕著です。20代までのコンビニ離れ傾向が顕著化しており、20歳未満と20代の構成比を合わせても、この30年あまりで3分の1強となっています。価格に敏感な若い世代は、より安価なスーパーや個人経営の弁当店を選ぶようになりました。
最大手セブンイレブンの2025年3~8月期決算は2年連続の減収減益となり、節約志向の消費者の離反により客数が減少しています。業界トップでさえ、顧客の流出に苦しんでいる状況です。
「まいばすけっと」などの小型スーパーが競合に
コンビニ離れを加速させているもう一つの要因が、都市型小型スーパーの台頭です。イオングループが展開する「まいばすけっと」などの小型スーパーがドミナント出店を進め、コンビニに近い利便性を持ちながら価格競争力で圧倒しています。
これらの小型スーパーは、夜遅くまで営業し、駅近や住宅街に出店することで、コンビニの「利便性」という最大の強みを侵食しています。弁当一つとっても、コンビニより100~200円安く購入できるため、消費者の選択肢として存在感を増しているのです。
構造的な問題を抱えるコンビニ業界
値上げの背景には、原材料費の高騰だけでなく、コンビニ業界が抱える構造的な課題があります。原材料や包材、物流コストの上昇に加え、近年の米価格高騰が影響しており、これらのコストをすべて吸収することは不可能です。
さらに深刻なのが人手不足です。24時間営業を維持するための人員確保が困難になっており、人件費も上昇しています。地方では深夜の来客数は一晩で数人ということも珍しくなく、人件費や光熱費のコストに見合わなくなっています。
フランチャイズモデルも圧迫要因です。本部とオーナーがそれぞれ利益を配分するため、スーパーと比べて利益率の設定を高くせざるを得ず、それが価格に反映されています。
消費者が選ぶ新たな選択肢
コンビニ離れが進む中、消費者はどこに向かっているのでしょうか。主な選択肢は以下の通りです。
スーパーの弁当コーナー 300~400円台の弁当が豊富で、夕方には値引きも期待できます。総菜も充実しており、組み合わせ次第で満足度の高い食事が可能です。
個人経営の弁当店やテイクアウト専門店 作りたてで温かく、コンビニより安価な場合が多くあります。地域密着型の店舗は、常連客を大切にする傾向があります。
外食チェーン店 1000円出すなら、牛丼チェーンや定食屋で温かい食事を楽しみたいという消費者も増えています。栄養バランスも考慮しやすいというメリットがあります。
自炊の見直し 週末にまとめて作り置きをする、簡単なレシピで朝弁当を作るなど、自炊回帰の動きも見られます。
コンビニは生き残れるのか?今後の展開
では、コンビニは今後どうなるのでしょうか。業界各社も対策を打ち出しています。
セブンイレブンは一部で比較的安価な「うれしい値」シリーズを展開し、価格面での魅力を訴求しようとしています。ファミリーマートは次回使える割引クーポンを配布するなど、リピーターの維持に努めています。
しかし、値上げ後に販売数が下降傾向に転じたのは弁当と惣菜パンで、おにぎりは維持しているという傾向から、商品カテゴリーによって消費者の反応が異なることがわかります。
消費がネットへ移行する変化に対応し、最短20分で店から商品を届けるサービスを強化するなど、利便性を高めなければコンビニ離れはさらに進む可能性があります。
変わりゆくコンビニの立ち位置
おにぎりと弁当、お茶を買うだけで1000円近くなる時代。物価高騰によるコンビニ商品の値上げは、消費者の行動を確実に変えつつあります。
「便利さ」という価値だけでは、もはや消費者を引き留めることは難しくなりました。小型スーパーの台頭、外食チェーンの充実、自炊回帰の流れなど、コンビニの競合は確実に増えています。
コンビニ来店客の50歳以上が39%を占めるなど、顧客層の高齢化も進んでいます。若年層が離れ、高齢層が支える構造では、長期的な成長は望めません。
コンビニ業界が生き残るには、価格面での競争力強化、商品の差別化、デジタル化による新サービスの提供など、多角的なアプローチが必要です。かつての「社会インフラ」としての地位を維持できるか、業界の正念場が続きます。
消費者にとっては、選択肢が増えたとも言えます。自分のライフスタイルや予算に合わせて、賢く食事を選ぶ時代になったのです。コンビニはその選択肢の一つとして、どのような価値を提供していくのか。今後の動向に注目が集まっています。

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