フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏が自身のYouTubeチャンネルで語った自民党の広告費問題が、いまネット上で大きな波紋を広げている。2月9日に公開された動画内で、古舘氏は自民党が高市早苗首相のPR動画に対し「1日あたり2億から5億円を投じていた」と発言。この指摘に対し、ネット上では「一理ある」「根拠が薄い」と賛否が真っ二つに分かれる事態となっている。
古舘伊知郎の発言内容を詳細に検証
古舘氏が問題視したのは、1月26日に自民党公式YouTubeチャンネルで公開された「【高市総裁メッセージ】日本列島を、強く豊かに。」というわずか30秒のショート動画だ。この動画は現在までに1億6000万回以上という驚異的な再生回数を記録している。
動画内で古舘氏は次のように語っている。「広告で1億レビュー以上取ったじゃないですか。やたら広告で高市さんのワンショットが出てきてね。反復、伝染が広告、CMですから。これは気がついたらパーっと入っていきますね、印象論で。なんとなく自民党に入れた人も多いわけですよ」
その上で、具体的な金額について「だいたい1日、聞くところによると、2億から5億円突っ込んでるって言いますからね。潤沢に金がある自民党の勝ちですよね」と述べた。
SNS時代の選挙戦略を痛烈に批判
古舘氏はこの発言の背景として、取材した中道改革連合のボランティアスタッフとのエピソードを紹介している。そのスタッフは立憲民主党の支持者から「支持者のなかで新聞を熟読して投票しようとする人はいなくなった」「若者はSNSで流れてきた情報を感覚で捉えて投票行動する」と諭されたという。
古舘氏はこれを受けて「完全なポピュリズム選挙の典型的な例」と表現し、政策論争ではなく、SNS広告による印象操作で選挙が決まる現代政治の在り方に警鐘を鳴らした形だ。
ネットユーザーの反応は真っ二つ
賛同する意見
「広告費については一理ある。新たな政党や新人立候補者は広告費を掛けられない。選挙における広告費は制約(上限額)を設けるべきだ」
「高市首相関連の動画が大量に出回ったのと、再生数も異常としか言えない数値なんですよね」
「もう常識は通用しません。SNSの印象で選挙は決まる。しかし、ブレーキも監視もきかない」
批判的な意見
「広告の話、是非とも証拠を出して欲しいですね」
「確かに広告はよく見たが、あれだけで投票行動に結びつくとは思えん」
「その若い人が感覚だけで投票と言うのは何の集計を元に言っているのだろうか? 適当に言っているとしたらそれこそ印象操作じゃないのか?」
さらに、「5億円で勝てるなら中道も同じ金額を使えば良かったのでは」「石破が総理のときに5億使って勝てたと思うか?」といった指摘も相次いでいる。
専門家の見解と事実関係
全国紙政治部記者によると、実際にどれくらいの広告費が投入されたのかは現時点では判明していない。「古舘さんが”2億円から5億円”の情報をどこで聞いたのかは不明。政治資金収支報告書が公開されるまでは推測の域を出ない」との指摘がある。
また、放送作家からは「古舘氏のいう1日2〜5億円の広告費の根拠はいっさい提示されていない。金額ははっきりとわからないものの、かなりの潤沢な資金をつぎ込んだことを言いたいがために、”と言われている”金額を提示したようにも聞こえる」との批判的な声も上がっている。
YouTube広告の実態と再生回数の謎
インフルエンサーのZ李氏は自身のXで「7300万再生なんてヒカキンとヒカルとがーどまんと朝倉未来が橋本環奈軍団と4vs4の合コン動画やっても行かないと思う」と異常な再生回数を指摘。「広告で5億とか使ってないか?」と疑問を呈している。
一方、業界関係者によれば、YouTube広告の再生単価は1再生あたり約0.5円程度とされており、仮に1億再生を購入した場合でも約5000万円程度という試算もある。古舘氏の主張する「1日2億〜5億円」とは大きな乖離があることになる。
この問題が投げかける重要な論点
今回の古舘氏の発言は、根拠の有無を巡る議論とは別に、現代の選挙とデジタル広告の関係という重要なテーマを浮き彫りにした。
従来のテレビCMや新聞広告には一定の規制があるものの、SNS広告については明確なルールが確立されていない。資金力のある政党が大量の広告を打つことで有権者の判断に影響を与えることは、民主主義の公平性という観点から議論の余地がある。
一方で、「広告を見ただけで投票先を決める有権者ばかりではない」「有権者の判断力を過小評価している」という反論も説得力を持つ。実際、今回の衆院選で自民党が圧勝した背景には、高市首相の政策や発信力、野党の失策など、複合的な要因が絡んでいることは間違いない。
根拠と議論の両面から考える
古舘伊知郎氏の「1日2億〜5億円」という具体的な金額については、現時点で明確な根拠が示されていない。政治資金収支報告書の公開を待つ必要があるだろう。
しかし、高市動画の異常とも言える再生回数、選挙期間中に多くのユーザーが広告を目にしたという証言、そして自民党の圧倒的勝利という事実を考えれば、何らかの大規模なデジタル戦略が存在したことは否定できない。
重要なのは、金額の真偽だけでなく、選挙におけるSNS広告の在り方そのものを議論することだ。資金力が選挙結果を左右する構造は民主主義にとって健全なのか。有権者は情報をどう見極めるべきなのか。古舘氏の発言は、そうした本質的な問いを私たちに投げかけている。
今後、政治資金収支報告書が公開されれば、真相の一端が明らかになるはずだ。それまでは根拠のない断定を避けつつ、デジタル時代の選挙の在り方について、冷静に議論を深めていく必要があるだろう。


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