2026年1月、日本最大の人口を抱える横浜市で衝撃的な告発が行われた。現職の人事部長が実名で市長を告発するという異例の事態が発生し、全国的なニュースとなっている。
告発の内容は、市長による深刻なパワーハラスメントと労働法違反の疑いだ。
勇気ある告発者・久保田淳人事部長の決断
告発したのは、横浜市総務局人事部長の久保田淳さん(49)で、実名と顔をさらす覚悟をしたうえでの告発である。26年間横浜市役所に勤務してきたベテラン幹部職員が、なぜこのような行動に出たのか。
2026年1月11日、週刊文春電子版で実名告発を行い、15日には神奈川県庁で記者会見を開いた久保田氏。会見では「他の人が言えないのなら私が公表するしかない」と決意を語り、山中竹春市長に対して「ふさわしい人権感覚を持ち、尊敬されるような言動に改めていただきたい」と訴えた。
山中竹春市長とは何者か
山中氏は横浜市立大学医学部教授から2021年にコロナの専門家として立憲民主党などの推薦を受け横浜市長選で初当選し、昨年8月に再選され現在2期目である。データサイエンスに基づく効率的な政策決定を推進してきたが、その裏で職員への要求がエスカレートしていたとされる。
興味深いことに、山中氏のパワハラは横浜市大教授時代から問題視されていたとの指摘もあり、市長就任前から人格的な問題が存在していた可能性が浮上している。
告発されたパワハラの具体的内容
人格を否定する暴言の数々
久保田氏が明らかにした山中市長の言動は、現代社会において到底許容できないものばかりだ。
市長は「人間のクズ」「ポンコツ」「デブ」「気持ち悪い」「死ねよ」といった陰口を職員に対して日常的に使用していたという。これらは学校でいじめとして扱われる言葉であり、組織のトップが使うべき言葉ではない。
副市長については代名詞として「ダチョウ」を使い、元市議会議長に対しては外見をやゆする発言を行っていた。また、局長や部長ら幹部についても「頭が悪い」「スペックが低い」などと罵倒していたとされる。
恐怖による支配と威圧行為
特に深刻なのは、物理的・精神的な威圧による職員の支配だ。
市長室で一対一でいるときに「録音したら許さない」「やったら、これだからな」と言いながら、3回にわたって銃撃ポーズをされたという証言は、職員に恐怖心を植え付ける悪質な行為といえる。
さらに、机をたたいて書類を投げつけたり、市長室を一時出入り禁止にするなど、立場を利用した理不尽な対応も明らかになっている。
「切腹」発言と人事権を背景にした脅迫
当時国際局の部長だった久保田氏に対して「アフリカ開発会議を誘致できなければ切腹だぞ」と発言したエピソードは、業務上の圧力として常軌を逸している。
さらに恐ろしいのは、人事部長に対して「市長が怒っていることを、飛ばされるかもしれないという恐怖を与える人事部からのジャブが与えられないか」と相談していたことだ。これは組織全体を恐怖で支配しようとする意図が明確に表れている。
労働法違反の疑い
パワハラだけでなく、労働法違反の可能性も指摘されている。深夜や休日を問わず久保田氏の私用スマホに業務連絡をしていたことが明らかになっており、これは労働時間管理の観点から問題がある。
会見に同席した労働事件専門の弁護士は、時間外労働と扱われないこうした連絡は労働法令に違反している疑いがあると指摘している。
市長側の反応と対応
山中市長は自身のホームページで「事実関係として承知、認識のない発言を一方的に公表されたことは極めて残念。外見や容姿について中傷するようなことはありえない」と反論している。
しかし、記者会見時点では記者団の取材に応じておらず、具体的な説明責任を果たしていない状況が続いている。この対応は、市民の疑念をさらに深める結果となっている。
ネットと横浜市民の反応
SNSでの議論の広がり
この告発はSNS上でも大きな反響を呼んでいる。元検事で弁護士の郷原信郎氏は、「山中氏のパワハラは横浜市大教授時代から問題視されていた」と指摘し、4年前の市長選で落選運動を行っていたことを明かしている。
横浜市議の柏原すぐる氏もSNSで「現職の幹部職員が実名で告発に踏み切ったという行動そのものは、真偽とは切り離しても重い事実」と発信し、組織の中枢にいる管理職が実名で動くことは本人にとっても組織にとっても非常に大きなリスクを伴うと指摘している。
市民と議会の動き
横浜市議会の議員らは人事部長の話を聞き、山中市長の説明を聞いた上で、議会としてどう対応するかを検討している状況だ。説明が不十分であれば、議会として説明の場を提供する必要性も議論されている。
日本共産党横浜市議団の古谷やすひこ氏は「これまでもいろんなところから言葉としては出されていた」と、以前から市長の言動に関する情報があったことを明らかにしている。組織内で長年問題が放置されていた可能性がうかがえる。
なぜ今、告発に踏み切ったのか
久保田氏は会見で、自分に対するパワハラだけではなく、他の職員が受けている被害を見過ごせなかったと語っている。「いま、こうやって資料としてまとめて振り返ると、動悸がしたり、手が震えるとか、やっぱり恐怖心を味わっていたんだなと、正直、思います。それを皆に味わってもらいたくない」という言葉には、職員を守りたいという強い思いが込められている。
近年、組織内での立場を利用したパワハラが社会問題化している中で、特に首長のような権力者によるハラスメントは告発が困難とされてきた。今回の実名告発は、そうした構造的な問題に一石を投じる重要な意味を持つ。
地方自治体のガバナンスに問われる課題
人事管理の責任者である現職部長が自ら公の場で告発に踏み切った背景には、既存の内部通報制度が首長という最高権力者に対して機能していないという深刻なガバナンス不全がある。
横浜市は人口377万人を抱える日本最大の基礎自治体であり、5万人を超える職員が働いている。組織のトップがパワハラを行っていた場合、組織全体に与える影響は計り知れない。
今後の展開と注目点
久保田氏は市に対して中立性と専門性のある調査を求めており、今後、第三者による検証が実施されるかが焦点となる。また、市議会がこの問題にどう対応するか、市長が説明責任をどう果たすかも注目される。
兵庫県知事のパワハラ問題など、近年地方自治体の首長によるハラスメント問題が相次いでいる。権力者のハラスメントをどう防止し、職員の心理的安全性をどう確保するかは、全国の自治体に共通する喫緊の課題だ。
変わるべきは組織文化
今回の告発は、単なる個人間のトラブルではない。人口最大都市の市長による組織的なパワハラ疑惑は、地方自治のあり方そのものを問い直す事件といえる。
久保田氏の「市長は他者へのリスペクトを持ってほしい」という訴えは、すべての組織のリーダーに向けられたメッセージだ。どんなに優れた政策を掲げても、人を大切にできないリーダーに組織を率いる資格はない。
横浜市という巨大組織がこの問題にどう向き合い、どう変わっていくのか。377万人の市民と全国の自治体が注視している。職員が安心して働ける組織、市民が誇れる横浜市の実現に向けて、真相解明と再発防止策の確立が求められている。

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