はじめに
2025年12月19日、日本銀行が政策金利を0.75%に引き上げ、約30年ぶりの高水準となりました。この歴史的な利上げは、住宅ローンを抱える家計や為替市場に大きな影響を及ぼします。本記事では、2026年以降の住宅ローン金利の動向と円安の行方について詳しく解説します。
日銀0.75%利上げの背景
なぜ今、利上げなのか
日銀は、経済・物価情勢をみながら、2026年以降も利上げを継続する方針を示しました。利上げの主な理由は以下の3点です。
第一に、2026年の春闘でも高い賃上げが期待されることです。企業収益が好調で、労使ともに賃上げに前向きな姿勢が続いています。
第二に、物価上昇が持続的になってきたことです。消費者物価指数は2%前後で推移し、日銀が目指す物価安定目標に近づいています。
第三に、円安が進行し輸入物価の上昇圧力が高まっていることです。利上げは円安対策としての側面も持っています。
30年ぶりの金利水準が意味すること
政策金利が0.5%を上回るのは1995年以来で、日本経済は本格的に「金利のある世界」へ回帰しつつあります。これまで約30年間続いた超低金利環境が終わりを告げ、家計や企業の借入コストが上昇する局面に入りました。
2026年の住宅ローンへの影響
変動金利はいつから、どれだけ上がる?
2026年4月に各銀行が変動金利の基準金利を0.25%程度引き上げる可能性が高く、実際の返済額への反映は2026年7月以降になると予想されます。
多くの金融機関では、年2回(4月と10月)のタイミングで金利を見直します。今回の利上げは2025年12月に決定されたため、次の基準日である2026年4月に基準金利が改定され、2〜3ヶ月後の7月返済分から影響が出始めます。
返済額はどのくらい増える?
変動金利で4500万円を借りた標準的なケースでは、2024年7月以降の利上げによって毎月の返済額が借り入れ当初と比べて約1万4000円増加すると試算されています。
具体的に、借入額3500万円、35年返済、元利均等返済のケースで見てみましょう。金利が0.5%の場合、毎月の返済額は約9万円です。これが0.75%に上昇すると、毎月の返済額は数千円増加します。さらに今後も利上げが続けば、家計への負担はより大きくなります。
「5年ルール」と「125%ルール」の落とし穴
変動金利の住宅ローンには、急激な返済額の変化を防ぐために「5年ルール」と「125%ルール」があります。5年ルールとは、金利が変わっても毎月の返済額は5年間変わらないというもの。125%ルールは、返済額が見直されても前回の1.25倍までしか上がらないというものです。
しかし、これらのルールには注意が必要です。毎月の返済額が変わらなくても、金利が上がれば返済額に占める利息の割合が増え、元本返済が進まなくなります。場合によっては、返済しているのに残高がほとんど減らないという事態も起こり得ます。
新規借り入れの場合は?
これから住宅ローンを借りる人の場合、多くの銀行が2026年4月の新規貸出金利を0.25%程度引き上げる見込みです。ただし、銀行間の競争が激しいため、一部の銀行では顧客獲得のために引き下げ幅を拡大し、適用金利の上昇を抑える戦略を取る可能性もあります。
これから住宅を購入する方は、複数の金融機関を比較検討することがこれまで以上に重要になります。
固定金利は今後どうなる?
長期金利も上昇中
住宅ローンの固定金利に影響を与える長期金利(10年国債利回り)は、12月19日に2%台に達し、約19年半ぶりの高水準となりました。
固定金利型の住宅ローンは、すでに2024年から上昇傾向にあり、2025年12月時点でフラット35の金利は約2.0%前後となっています。今後も長期金利の上昇が続けば、固定金利はさらに上がる可能性があります。
変動vs固定、どちらを選ぶべき?
2025年12月時点で、変動金利は約0.8%、フラット35の固定金利は約2.0%と、その差は約1.2%あります。変動金利が1.2%以上上昇するのであれば固定金利を使う方が有利という計算になります。
今後さらに3〜4回の追加利上げがあれば、変動金利と固定金利の差は縮まります。しかし、専門家の多くは、借りすぎに注意し金利上昇対策を行う前提のもとでは、まだ変動金利の方が有利と考えています。
2026年以降の利上げペースは?
市場予想:2026年中にもう1回
市場では、日銀が2026年にさらに追加利上げを実施し、政策金利が1.0%〜1.5%まで段階的に引き上げられるとの見方が広がっています。
植田日銀総裁は記者会見で、現在の0.75%の政策金利は中立金利の推計範囲の下限よりも低いと述べ、追加利上げの余地を示唆しました。2026年の春闘で高い賃上げが実現すれば、さらなる利上げが実施される可能性が高まります。
利上げペースを決める要因
今後の利上げペースを左右する要因は3つあります。
一つ目は、2026年の春闘での賃上げ率です。2025年並みの高い賃上げが実現すれば、消費拡大とインフレ継続につながり、利上げの根拠となります。
二つ目は、米国経済と関税政策の動向です。トランプ政権の関税政策が日本経済に悪影響を及ぼす場合、日銀は利上げを慎重にする可能性があります。
三つ目は、円安の進行度合いです。過度な円安が続けば、輸入物価の上昇を抑えるために、追加利上げが前倒しされる可能性もあります。
円安は止まるのか?
利上げ後も円安が進んだ理由
日銀の利上げ決定後、ドル円相場は1ドル157円台まで円安が進みました。本来、利上げは通貨高要因のはずですが、なぜ円安になったのでしょうか。
植田総裁の記者会見が、追加利上げに慎重な内容だと市場に受け止められたことが主な理由です。総裁は利上げペースについて踏み込んだ言及を避け、「手探り」で進めると述べました。これにより、市場では「日銀は今後の利上げに慎重」との見方が広がりました。
日米金利差の縮小でも円安が続く矛盾
通常、日本の金利が上がり米国の金利が下がれば、日米金利差が縮小して円高になるはずです。しかし実際には、日米の長期金利差は2022年3月以来の低水準となっているにもかかわらず、円安が進行しています。
この矛盾の背景には、日本の財政拡大への懸念や、日銀の利上げペースが緩やかすぎるとの見方があります。市場参加者は、日本のインフレリスクや構造的な円売り圧力が、金利差の縮小を上回っていると判断しているようです。
2026年の為替見通し
専門家の見解は分かれています。楽観的な見方では、2026年中に日銀がさらに利上げを実施し、円安に一定の歯止めがかかると予想されています。
一方、慎重な見方では、日銀の利上げ余地が限られる中、米国経済の底堅さが続けば、円安傾向が継続する可能性も指摘されています。為替は160円に向かうリスクも残されているとの指摘もあります。
家計はどう備えるべきか
すでに変動金利で借りている人
毎月の返済額が増えることを見越して、今から家計の見直しを始めましょう。具体的には以下の3つの対策が有効です。
第一に、繰り上げ返済の検討です。余裕資金がある場合、少しでも元本を減らしておくことで、将来の利息負担を軽減できます。
第二に、固定金利への借り換えの検討です。今後も金利が上昇すると予想される場合、固定金利に切り替えることで将来の負担を確定できます。ただし、借り換え手数料とのバランスを考慮する必要があります。
第三に、家計の支出見直しです。通信費や保険料などの固定費を削減し、金利上昇に備えた余力を作っておきましょう。
これから住宅を購入する人
無理のない借入額を設定することが最重要です。金利が上昇しても返済できる余裕を持った資金計画を立てましょう。
具体的には、現在の金利に1〜2%上乗せしたシミュレーションを行い、その返済額でも家計が成り立つか確認してください。また、頭金を多めに用意することで、借入額自体を抑えることも有効です。
変動金利と固定金利のどちらを選ぶかは、個々の状況によって異なります。返済期間が短い場合や、繰り上げ返済の予定がある場合は変動金利が有利です。一方、返済額の安定を重視する場合や、今後大きな金利上昇が予想される場合は固定金利が安心です。
まとめ
日銀の0.75%への利上げは、日本経済が本格的に「金利のある世界」へ回帰する象徴的な出来事です。2026年には、変動金利の住宅ローンで毎月の返済額が増加し、固定金利もさらに上昇する可能性があります。
一方、円安については、利上げ後も進行するという予想外の展開となっています。今後の動向は、日銀の追加利上げペース、米国経済の動向、そして日本の財政政策に大きく左右されます。
住宅ローンを抱える家計にとって、金利上昇は避けられない現実です。しかし、早めの準備と適切な対策により、その影響を最小限に抑えることは可能です。金融機関の金利動向を注視しながら、自分に合った返済戦略を立てていきましょう。
最も重要なのは、「借りすぎない」ことです。住宅購入は人生の大きな決断ですが、無理のない範囲で計画を立て、将来の金利上昇にも耐えられる余裕を持った資金計画を心がけてください。


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