NHK連続テレビ小説「虎に翼」でヒロインを務め、2024年紅白歌合戦の司会にも抜擢された女優・伊藤沙莉。その飾らない人柄と圧倒的な演技力で多くのファンを魅了する彼女には、壮絶な幼少期の経験と、強い家族の絆がありました。兄はM-1グランプリ準優勝の実績を持つお笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介。
この記事では、伊藤沙莉と兄・俊介の心温まるエピソードと、一家離散の危機を乗り越えた家族の物語を紹介します。
兄はM-1準優勝芸人「オズワルド」伊藤俊介
伊藤沙莉の兄は、お笑いコンビ「オズワルド」のツッコミ担当・伊藤俊介です。5歳年上の俊介は、2014年にコンビを結成し、2019年から2022年まで4年連続でM-1グランプリの決勝に進出。2021年には準優勝という輝かしい成績を収めました。
兄妹揃って芸能界で活躍する二人ですが、実は当初、俊介は妹が有名女優であることを公表していませんでした。沙莉が先に芸能界で成功していたこともあり、芸人としてのプライドから言い出せなかったといいます。最終的に公表に踏み切ったのは、同じ芸人仲間のハマカーン神田のアドバイスがきっかけでした。
「ヒモお兄ちゃん」と呼ばれた同居時代
2020年まで、伊藤兄妹は一緒に暮らしていました。しかし家賃の負担額には大きな差があり、沙莉が22万円を負担する一方で、俊介はわずか4万円。俊介本人が「ヒモお兄ちゃん」と自称するほど、妹に経済的に支えられていたのです。
番組で明かされたエピソードでは、俊介が自宅で合コンをしていた際、沙莉が帰宅すると女性陣が一言もしゃべらなくなってしまったというユニークな思い出も。芸能人の妹を持つ兄ならではの苦労が垣間見えます。
2020年7月、俊介は独立し、Twitterで「長年に渡った妹の扶養を外れることとなりました」と報告。妹への感謝の気持ちを綴りました。この投稿で二人が兄妹であることを知り、驚いたファンも少なくありませんでした。
厳しくも優しい妹の叱咤激励
兄妹の仲の良さは、様々な場面で見て取れます。沙莉は兄の遅刻癖を心配し、時には厳しく叱責することも。あるとき、あまりにも遅刻が続く俊介に電話で「本当にいい加減にしなよ!抹殺されても知らないからね!頭が変だよ!」と強い言葉をかけたといいます。
この叱責が功を奏し、俊介は「起きる時間の6時間前にアラームをセットする」という習慣を始め、飲み会でもアラームが鳴ったら途中でも帰るというルールを自分に課すように。35歳にしてようやく遅刻癖を克服した兄を、沙莉は「成長した!」と嬉しそうに語っています。
一方で、兄妹で二人きりの飲みに行くと「なんか少し緊張気味」になるという微笑ましい一面も。2023年には、俊介の初書籍『一旦書かせて頂きます』の”お渡しイベント”として久々のサシ飲みを楽しみ、沙莉は「実は彼の文章は好きなので楽しみに読みたい」とSNSで兄への期待を表明しました。
幼少期に訪れた一家離散の危機
伊藤兄妹の深い絆の背景には、幼少期に経験した壮絶な家庭環境があります。沙莉が1〜2歳の頃、父親が経営していた道路関係の会社が倒産。バブル崩壊の影響を受け、父親は多額の借金を残したまま家を出て行き、両親は離婚しました。
家を失った一家は、一時的にバラバラになることを余儀なくされます。沙莉は母親の友人宅に、兄の俊介と姉は兄の幼馴染の家に預けられました。母親は軽トラックで寝泊まりし、伯母は会社に泊まり込みながら、必死に次の住まいを探したといいます。
当時2歳だった沙莉は、なぜ自分だけ一人なのか理解できず、寂しい思いをしたと後に語っています。この一家離散の期間は約3ヶ月続きました。
母と伯母が築いた「家族が一緒にいる幸せ」
母親と伯母の懸命な努力の末、一家は小さなアパートで再び一緒に暮らせるようになりました。古くて狭いアパートで、5人が3枚の布団で寝る生活でしたが、沙莉にとってそれは何よりも幸せな時間でした。
沙莉はバラエティ番組で「家に廊下があることに感動した」「ダイニングテーブルで食事をするのが初めてで嬉しかった」と当時の思い出を語っています。小学2年生の時には団地に引っ越し、念願の自分の部屋も手に入れましたが、それでも家族と過ごす時間を何より大切にしていました。
母親は塗装業の仕事を始め、現在も一人親方として屋根に上がって働き続けています。朝から晩まで働く母に、沙莉は「もっとください、もっとください」と愛情を求める子どもだったと振り返ります。そのため、母の仕事が休みになる雨の日が大好きだったといいます。
母親から教わった「ひとりじゃ神輿は担げねぇ」という言葉は、沙莉の人生の指針となっています。周囲への感謝の気持ちを忘れないこと。この教えは、今でも沙莉の心に深く刻まれています。
父親との最期の別れと家族の再会
家を出た父親でしたが、沙莉や姉の史織は連絡を取り続けていました。父親は後に咽頭がんを患い、「声」か「命」かの選択を迫られます。沙莉のために「命」を選んだ父親でしたが、2020年の年初、沙莉が20歳の頃にこの世を去りました。
俊介はnoteで「最後の最後に家族で揃えたこと、妹には頭が上がらない」と綴っています。沙莉が連絡を取り続けていたからこそ、父親の最期に家族全員で集まることができたのです。幼い頃に一家離散を経験した兄妹にとって、最後に家族揃って父を見送れたことは、大きな意味を持つ出来事でした。
困難を乗り越えた絆が生んだ強さ
現在、沙莉は女優として、俊介は芸人として、それぞれの道で輝いています。2024年にはNHK朝ドラ「虎に翼」の撮影現場で、沙莉が実の兄・俊介と、劇中で兄を演じる上川周作との3ショットをSNSに投稿し、話題となりました。
沙莉が2024年末に劇作家の蓬莱竜太と結婚した際も、兄の俊介が先走って生放送のラジオで話してしまい「鼻血が出るぐらい怒られた」というエピソードも。相変わらずの仲の良さがうかがえます。
幼い頃の苦労を経験したからこそ、家族の絆の大切さを深く理解している伊藤兄妹。困難を乗り越えてきた経験が、二人の人間としての強さと、温かい人柄を形作っているのでしょう。
家族の愛が育んだ才能
伊藤沙莉とオズワルド伊藤俊介。幼少期の一家離散という壮絶な経験を経て、強い絆で結ばれた兄妹です。母親と伯母の献身的な愛情、そして兄妹で支え合ってきた日々が、二人の今日の成功を支えています。
「ヒモお兄ちゃん」として妹に支えられた時期を経て、M-1準優勝という快挙を成し遂げた俊介。子役から女優として活躍し、朝ドラのヒロインまで務めるようになった沙莉。それぞれの分野で輝く二人の背景には、家族で助け合い、困難を乗り越えてきた歴史がありました。
現在も変わらず仲良しの伊藤兄妹。これからも二人の活躍と、温かい家族の物語から目が離せません。


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