芸能界から清掃業へ──どん底からの挑戦
カラテカ入江慎也の名前を聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「闇営業騒動」かもしれません。しかし、彼の現在の姿は、失敗から立ち上がり、新たな道で成功を掴んだビジネスマンです。吉本興業から契約解除されてから約5年、入江氏は清掃会社「株式会社ピカピカ」の代表取締役として、年商5000万円規模の企業を育て上げています。
吉本興業契約解除までの経緯と闇営業問題
2019年6月、入江は吉本興業を契約解除されました。詐欺グループの忘年会に芸人を仲介した「闇営業」が発覚したためです。「友達5000人芸人」というキャッチフレーズで知られ、幅広い人脈を武器に活躍していた入江でしたが、その人脈が裏目に出る形となりました。
契約解除後の2ヶ月間、入江は家に引きこもり、何も手につかない状態だったといいます。芸人として築き上げてきた全てを失い、相方の矢部太郎や先輩・後輩に多大な迷惑をかけてしまったという罪悪感に苛まれる日々でした。
相方・矢部太郎からのアドバイスが転機に
「このままではダメだ」──そう感じた入江は、相方の矢部に相談します。飲食業か清掃業を考えていると伝えたところ、矢部から「地に足つけて、自分自身が納得できる仕事がいい」というアドバイスを受けました。
この言葉が入江の背中を押しました。彼は過去の人脈に頼らず、自らネットで検索して「おそうじ本舗」のアルバイトに応募。42歳という年齢でのアルバイトスタートは、プライドとの戦いでもありました。
ゼロからの清掃業務──アルバイトから起業へ
入江のアルバイト時代は決して楽なものではありませんでした。清掃業は体力的にもハードで、夏場のエアコン清掃などは過酷な作業です。しかし、彼は持ち前の明るさと真摯な姿勢で仕事に取り組みました。
アルバイト先の清掃会社の社長は、入江の頑張りを認め、独立を後押ししてくれました。2020年7月7日、入江は清掃会社「株式会社ピカピカ」を設立。「毎日をピカピカに」をモットーに、ハウスクリーニング事業を展開し始めました。
株式会社ピカピカの成長と事業展開
設立当初は仕事が少なく、失敗の連続だったという「ピカピカ」。しかし、入江は諦めませんでした。芸人時代と同じように、スケジュール表が埋まっていないと不安になるという性格を原動力に、営業活動に奔走しました。
現在、同社は東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県を中心にサービスを展開。2024年には大阪支店もオープンし、全国展開への第一歩を踏み出しています。年商は5000万円規模に成長し、複数の従業員を抱える企業へと発展しました。
「カラテカ入江の清掃会社」というブランディング戦略
入江のビジネス戦略で注目すべきは、自身の知名度を活かしたブランディングです。彼は「カラテカ入江の清掃会社」として事業を展開し、過去の芸能界での実績をマイナスではなくプラスに転換させています。
メディアの取材にも積極的に応じ、清掃業務への真摯な姿勢を見せることで、「信用」を少しずつ取り戻しています。彼は自身の著書『信用』(2023年刊行)の中でも、失った信用をどう取り戻すかについて赤裸々に綴っています。
幅広い交友関係は今も健在
闇営業騒動で一度は問題視された入江の人脈ですが、現在は健全な形で活かされています。大相撲の元幕内大喜鵬・山口雅弘氏の断髪式に出席するなど、スポーツ界との交流も継続。また、相方の矢部とは騒動後、「ここ数年で一番話をした」というほど関係が深まりました。
ただし、入江は人脈に対する考え方を大きく変えています。「どんな人なのかもよくわからぬまま多くの方に会って紹介していた。正気の沙汰ではなかった」と当時を振り返り、現在は慎重に人間関係を築いているといいます。
芸能界復帰への思いと現在のモチベーション
入江の最大の目標は、ピカピカの全国展開です。そして、もう一つの夢が「いつか相方の矢部と再びステージに立つこと」。現在、矢部はカラテカとして活動を続けており、コンビは解散していません。
「再び相方とライブができるのを望んでいます。これが私の一番したいことです」と語る入江。そのためには、まず相方に信用してもらい、吉本興業にも認めてもらう必要があります。「今はピカピカの事業を懸命にやるしかない」──そう語る彼の目には、強い決意が宿っています。
働き方と生活の変化
「昨日の夜は10時に寝ました」──そう語る入江の生活は、芸能界時代とは全く異なります。年齢も考慮し、早寝早起きで体調管理を徹底。作業服に身を包み、現場で汗を流す日々です。
興味深いのは、年商5000万円という数字がありながらも「使える金額は芸人の時の方が多い」と語る点です。社員の給料や経費を考えると、経営者としての責任の重さを実感しているのでしょう。
清掃業界を変えたいという野望
入江は自社の成長だけを目指しているわけではありません。「清掃業界を変えたい」という大きなビジョンを持っています。清掃業は社会に必要不可欠でありながら、まだまだ認知度や社会的地位が低い業界です。
「合コンでうちの会社の名前を出してもらうのが目標」──このユニークな目標からも、清掃業のイメージアップを図りたいという入江氏の思いが伝わってきます。
闇営業騒動を「神様が与えたブレーキ」と捉える視点
入江は現在、闇営業騒動を「神様が与えてくれたブレーキだった」と前向きに捉えています。「あのことがなければさらに大変なことが起きていたかもしれない」──人脈に溺れ、正気ではなかった当時を振り返り、騒動が自分を止めてくれたと語ります。
この視点の転換こそが、入江の再起を可能にした要因かもしれません。失敗を受け入れ、そこから学び、新たな価値観を構築する。
その姿勢が、彼のビジネス成功につながっています。
再起と成功のストーリー
カラテカ入江の人生は、失敗から立ち上がることの大切さを教えてくれます。吉本興業を解雇され、芸能界を去った彼が、42歳からアルバイトを経て起業し、年商5000万円の企業を育て上げた実績は、多くの中年男性に勇気を与えるでしょう。
清掃会社「株式会社ピカピカ」の全国展開という新たな目標に向けて走り続ける入江の動向から、目が離せません。


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