なぜ11兆円もの税金の行方がわからないのか
新型コロナウイルス対策として政府が計上した予備費12兆円。国民全員に10万円を再び配れるほどの巨額の税金です。ところが、この資金の約9割にあたる11兆円の具体的な使い道が追跡不可能な状態にあることが、日本経済新聞の独自調査で明らかになりました。
この問題は2022年4月に報じられて以降、大きな波紋を呼びましたが、政府からの明確な説明はいまだに不十分なままです。国民の税金がどのように使われたのか、なぜ透明性が確保されなかったのか。本記事では、コロナ予備費をめぐる問題の本質に迫ります。
「使途不明」の実態 – 6.5%しか追跡できない衝撃
日経新聞の分析によると、政府が国会に報告した12兆円余りの予備費のうち、最終的な用途を正確に特定できたのはわずか6.5%の8千億円強にとどまりました。
なぜこれほどまでに追跡が困難なのでしょうか。原因は報告の粗雑さにあります。国会への報告が「感染症対策費○兆円」といった大まかな科目でしか示されず、最終的に誰にいくら支払われたのか、どんな事業に使われたのかが不明瞭なのです。
予備費という「伝家の宝刀」の濫用
そもそも予備費とは何でしょうか。
通常、政府は特定の政策目的ごとに詳細な予算を積み上げ、国会の審議を経て承認を得る必要があります。しかし予備費は例外的な制度です。金額だけを事前に計上しておき、使い道は閣議決定のみで決められるという強力な権限を持っています。
従来、政府は災害など不測の事態に備えて年間5000億円程度の予備費を用意してきました。ところがコロナ禍では、その20倍を超える規模の予備費が計上されました。国会のチェック機能を回避できる仕組みが、前例のない規模で使われたのです。
12兆円の内訳 – 最大の問題は地方創生臨時交付金
12兆円余りをおおまかに分類すると、医療・検疫体制確保向けの4兆円に次いで多いのが地方創生臨時交付金として地方に配られた3.8兆円でした。
この地方創生臨時交付金こそが、使途不明金問題の核心です。国から自治体への「つかみ金」として配られたため、最終的な使途の追跡が極めて困難になっています。
疑問視される使途の実例
コロナ問題とこじつけて公用車や遊具を購入するなど、疑問視される事例も報告されています。一部報道では、入籍するカップルへのシャンパンタワープレゼントなど、感染症対策とは無関係と思われる事業への流用も指摘されました。
自治体は「コロナ対策」という広い名目のもとで、本来の趣旨とは異なる用途に資金を使った可能性があります。そして国は、その詳細を把握していないのです。
国民が怒るべき本当の理由
山口県阿武町の誤入金4630万円問題では、連日メディアが大きく報道し、国民の関心を集めました。しかし、コロナ予備費の90%にあたる11兆円が具体的に何にどう使われたのかまったくわからないという問題は、その650年分以上の金額に相当します。
11兆円あれば、国民全員に約9万円を配ることができます。これだけの巨額の税金の使途が不明確であることは、財政民主主義の根幹を揺るがす重大な問題です。
なぜメディアは追及しないのか
2022年4月の報道以降、この問題への継続的な追及は限定的でした。政府からの詳細な説明もなく、選挙前の重要な論点として十分に議論されることもありませんでした。
国会の予算審議を経ずに巨額の支出が可能という制度の危うさ、そして実際にその透明性が確保されなかった事実。これらは、今後の危機管理予算のあり方を考える上で、極めて重要な教訓となるはずです。
予備費膨張の構造的問題
コロナ予備費の問題は、単なる管理のずさんさだけではありません。国会の監視機能が働かない仕組みそのものに問題があります。
緊急時だからこそ迅速な対応が必要という理屈は理解できます。しかし迅速性と透明性は両立できるはずです。事前の詳細審議が困難でも、事後的な詳細報告と検証は可能です。それすら行われなかったことが、この問題の本質といえるでしょう。
私たちができること – 財政監視の重要性
この問題から学ぶべきは、国民による財政監視の重要性です。
- 情報開示の要求: 予備費の使途について、より詳細で追跡可能な報告を求める声を上げる
- 選挙での意思表示: 財政透明性を重視する候補者を支持する
- メディアの役割: 継続的な報道と検証を求める
- 制度改革の議論: 予備費制度そのものの見直しを求める
今後の危機管理予算はどうあるべきか
次の危機が来たとき、同じ過ちを繰り返さないために、制度設計を見直す必要があります。
- 予備費の規模に上限を設ける
- 使途報告の詳細化を義務付ける
- 第三者による検証機関の設置
- デジタル技術を活用した支出の可視化
危機対応の迅速性を保ちながら、財政民主主義の原則を守る仕組みづくりが求められています。
忘れてはならない11兆円
コロナ予備費11兆円の使途不明問題は、単なる過去の出来事ではありません。私たちの税金がどのように使われているのか、そのチェック機能が十分に働いていないという現在進行形の課題です。
「緊急時だから仕方ない」で済ませてしまえば、今後も同様の問題が繰り返されるでしょう。国民一人ひとりが財政に関心を持ち、透明性と説明責任を求め続けることが、健全な民主主義社会を維持するために不可欠です。
11兆円という巨額の税金。その行方を追い続けることは、私たち国民の権利であり、責任でもあるのです。


コメント