厚生労働省が示した画期的な方針転換
2025年10月27日、厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会において、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格更新制を廃止する案を提示しました。この発表は、介護業界に大きな波紋を広げています。現行制度では5年ごとの更新研修が義務付けられていますが、この負担がケアマネジャーの離職や担い手不足の一因となっていたためです。
なぜ今、更新制廃止なのか?3つの背景
1. 5年ごとの研修がもたらす過重な負担
現行制度では、ケアマネジャーは5年ごとに更新研修を受講することが義務付けられています。この研修には以下のような負担が伴います。
時間的負担: 更新研修は通常、数日間にわたる集合研修が必要です。現場で多忙を極めるケアマネジャーにとって、業務を調整して研修に参加することは容易ではありません。特に小規模事業所では、ケアマネジャーが不在になることで業務が滞るリスクもあります。
経済的負担: 研修費用は自己負担または事業所負担となるケースが多く、数万円規模の出費が発生します。さらに交通費や宿泊費なども加わるため、経済的な負担は決して小さくありません。
心理的負担: 日々の業務に追われる中で、定期的に研修を受けなければ資格を失うというプレッシャーは、ケアマネジャーの心理的負担となっています。
2. 深刻化するケアマネジャー不足の現状
日本の高齢化は加速度的に進んでいる。介護サービスの需要が急増する一方で、ケアマネジャーの人材確保は課題となっています。
厚生労働省の調査によれば、ケアマネジャー資格保有者は約70万人いるものの、実際に業務に従事しているのは約半数程度です。資格を持ちながら働いていない「潜在的ケアマネジャー」が多数存在する背景には、更新制による負担感も影響していると考えられています。
更新制の廃止により、一度資格を取得すれば終身有効となることで、復職のハードルが下がり、潜在的ケアマネジャーの現場復帰を促進する効果が期待されています。
3. 実務経験要件の見直しも同時進行
ケアマネジャーになるためには、現在、介護福祉士や看護師などの国家資格を持ち、5年以上の実務経験が必要とされています。しかし、この高いハードルも担い手不足の一因とされてきました。
厚生労働省は資格更新制の廃止と並行して、この実務経験要件の見直しも検討しています。より多くの人材がケアマネジャーを目指せる環境を整えることで、介護業界全体の人材確保につなげる狙いがあります。
現場からの反応と懸念点
歓迎の声
多くのケアマネジャーからは、更新制廃止を歓迎する声が上がっています。「5年ごとの研修スケジュール調整が大変だった」「費用負担が軽減されるのはありがたい」といった意見が聞かれます。
特に子育て中のケアマネジャーや、地方在住で研修会場へのアクセスが困難だった方々にとっては、大きな負担軽減となるでしょう。
質の担保への懸念
一方で、更新制廃止により「ケアマネジャーの質が低下するのではないか」という懸念の声もあります。更新研修は、最新の介護保険制度や支援技術を学ぶ重要な機会でもあったからです。
ただし、厚生労働省は更新制を廃止する代わりに、任意参加型の継続教育システムの充実を図る方針です。義務ではなく、自発的な学びを促進する仕組みへの転換を目指しています。
今後の制度設計で注目すべきポイント
継続教育の新たな形
更新制に代わる継続教育システムとして、以下のような方法が検討される可能性があります。
オンライン研修の拡充: 時間や場所の制約を受けない学習機会の提供 実践的な事例検討会: 現場の課題解決につながる実践型研修 段階別スキルアップ制度: 経験年数や専門分野に応じた選択制研修
質の評価システムの構築
資格更新制がなくなることで、ケアマネジャーの質を担保する新たな仕組みが必要になります。実践能力を適切に評価し、継続的な成長を支援する制度設計が求められています。
介護業界全体への波及効果
ケアマネジャーの資格更新制廃止は、介護業界全体に良い影響を及ぼす可能性があります。
まず、ケアマネジャー不足の解消により、要介護者一人ひとりに対してより丁寧なケアプラン作成が可能になります。現在、一人のケアマネジャーが抱える担当件数は過多になりがちですが、人材が増えることで適正化が期待できます。
また、潜在的ケアマネジャーの復職が進めば、経験豊富な人材が現場に戻ることで、若手ケアマネジャーへの指導体制も強化されるでしょう。
制度改革の行方と私たちの役割
厚生労働省が示したケアマネジャー資格更新制の廃止案は、介護人材確保という課題に対応するための重要な一歩です。5年ごとの研修負担を軽減し、実務経験要件も見直すことで、より多くの人材が介護の現場で活躍できる環境を整えようとしています。
今後は社会保障審議会での議論を経て、2026年度以降の実施を目指して具体的な制度設計が進められます。更新制廃止と同時に、ケアマネジャーの質を担保する新たな仕組み作りが重要な課題となるでしょう。
超高齢社会を支える介護の現場において、ケアマネジャーは要介護者と介護サービスをつなぐ重要な役割を担っています。今回の制度改革が、ケアマネジャーがより働きやすく、そして質の高いケアマネジメントを提供できる環境づくりにつながることを期待したいと思います。


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