警備・セキュリティ業界で知られるセコムが、医療・介護分野で独自の存在感を発揮している。一見すると異なる事業領域に見えるが、その根底には「安心・安全を提供する」という共通のものがある。
セコムのメディカルサービス事業についてシラベテミタ!
事業規模と組織体制
セコムグループのメディカルサービス事業は、中核企業であるセコム医療システム株式会社を中心に展開されている。2024年3月期の売上高は274億6,300万円、従業員数は443名という規模で運営されており、セコム株式会社の完全子会社として位置づけられている。
2023年3月期には増収増益を達成し、特に海外事業が好調に推移したことやインドの総合病院事業会社の増収、医療機器販売の好調により、売上高が前期比4.1%増加、営業利益が前期比3.7%増加という実績を残している。メディカルサービス事業は上場介護企業の連結売上高で業界3位に位置づけられており、業界における存在感は高まっている。
セコムならではの5つの競争優位性
1. セキュリティ技術を応用したICTソリューション
セコムの安全な情報ネットワークを活用したクラウド型電子カルテサービスをはじめ、遠隔画像診断支援サービス、病院経営情報分析システムなど多様なICTソリューションを提供している。長年セキュリティ事業で培った情報管理技術が、医療分野における個人情報保護や情報セキュリティの要求水準を満たす基盤となっている。
電子カルテシステム「セコムOWEL」や「セコム・ユビキタス電子カルテ」は、医療機関のデジタル化を支援するだけでなく、セコムの監視技術を応用した高度なセキュリティ体制により、医療情報の安全性を担保している点が大きな差別化要因となっている。
2. 医療から介護、予防までの切れ目のないサービス設計
「医療」から「介護」「健康・予防」まで、ICTを活用して切れ目のないメディカルサービスを展開している点が、セコムの大きな強みである。在宅医療では訪問看護サービスを中心に展開し、訪問介護サービスを柱としたリハビリテーションや多彩なプログラムを通じた通所介護(デイサービス)を提供している。
さらに薬剤提供を行うセコム薬局、健康維持・推進のための予防サービスまで包括的に展開することで、患者や利用者のライフステージに応じた一貫したサポート体制を構築している。この垂直統合型のサービスモデルにより、利用者は異なる事業者を探す手間なく、一つの窓口で必要なサービスにアクセスできる。
3. シニアレジデンス事業におけるノウハウの融合
セコムの医療・介護・セキュリティのノウハウを結集したシニアレジデンスや、24時間管理人が常駐し、もしもの時も安心なサービス付き高齢者向け住宅を運営している点も特筆すべき取り組みである。
警備会社としての緊急対応ノウハウと医療・介護サービスのケア技術を組み合わせることで、高齢者が安心して暮らせる住環境を実現している。緊急通報システムや見守りサービスなど、セコム独自のテクノロジーがシニアレジデンスの付加価値を高めている。
4. 医療機関向け開業・運営支援という独自ポジション
在宅医療に力を入れたクリニックの開業・運営支援や地域に根ざした病院のための運営支援という独自の事業展開も注目に値する。単なる医療サービスの提供者にとどまらず、医療機関そのものの経営をサポートするコンサルティング機能を有している。
セコムグループが持つ設備管理、警備、情報システムなどの総合力を活かし、医療機関の開業から運営までをトータルでサポートできることは、他の医療・介護事業者にはない競争優位性となっている。医療機器の販売や医薬品の共同仕入れ・販売といった周辺事業も展開し、医療機関とのリレーション強化につなげている。
医療・介護業界における戦略的ポジション
セコムのメディカルサービス事業が成功している理由は、「セコムブランド」の信頼性だけではない。セキュリティという本業で培った「何かあったときに駆けつける」「24時間365日体制で見守る」「情報を安全に管理する」という競合他社が真似できない、在宅医療や高齢者介護の領域と親和性が高いことが本質的な要因である。
超高齢社会を迎えた日本において、病院完結型医療から地域完結型医療への転換が進んでいる。在宅医療や訪問看護のニーズは今後も拡大が見込まれており、セコムが持つテクノロジーとネットワークは大きなアドバンテージとなる。
成長戦略と展望
セコムのメディカルサービス事業は、単なる事業多角化ではなく、同社の企業理念である「社会システム産業」の構築という大きなビジョンの一部として位置づけられている。医療・介護の領域でも「安心できる社会」を実現するという使命感が、事業の推進力となっている。
デジタルヘルスの進展により、ウェアラブルデバイスによる健康管理や、AIを活用した診断支援など、医療のあり方は急速に変化している。セコムはセキュリティ事業で蓄積したIoT技術や画像解析技術を医療分野に応用し、予防医療や早期発見のための新しいソリューション開発に注力している。
また、従業員数910人のうち、女性が658人を占めるという特徴も、医療・介護という対人サービスの質を支える重要な要素となっている。ダイバーシティを活かした組織運営が、きめ細やかなケアサービスの提供につながっている。
セコムだからできる医療・介護
セコムのメディカルサービス事業は、セキュリティという異業種から医療・介護分野に参入し、独自の競争優位性を確立した好例である。単なる事業多角化ではなく、本業で培った技術やノウハウを新しい領域で活かすという「技術の転用」の成功モデルと言える。
インドでの総合病院運営という国際展開も実現している。在宅医療から介護、予防医療、医療機関支援、シニアレジデンスまで幅広いサービスラインナップを持ち、それらをICTで統合的に管理するという独自のビジネスモデルは、今後の超高齢社会において一層重要性を増す。



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