「力士って給料をいくらもらっているの?」——大相撲を見ていると、ふとそんな疑問が浮かぶ人は多いはずです。特によく言われるのが「十両未満は無給」という話。本当に収入がゼロなのでしょうか。
結論から言うと、「月給がない」という意味では事実ですが、「収入がゼロ」というのは誤解です。幕下以下の力士にも「場所手当」や「奨励金」が支給されており、相撲界には独特のお金の仕組みがあります。この記事では、番付ごとの給料の違いから、2027年から始まる待遇改定まで、力士のお金事情をわかりやすく解説します。
力士の給料はどこから出ている?
力士の給与や手当を支払っているのは、所属する相撲部屋の親方個人ではなく公益財団法人 日本相撲協会です。部屋の運営費とは別枠で、協会が力士一人ひとりに給与や各種手当を支給しています。
給料の大きな境目になるのが「十両」です。正式名称は「十枚目」で、十両以上の力士は「関取」と呼ばれます。日本相撲協会の区分でも、十両以上は月給制、幕下以下は月給ではなく本場所ごとの場所手当という扱いになっており、ここが待遇の分水嶺です。
力士の給料はいくら?番付別に比較
2026年現在の給与体系は以下の通りです。
| 番付 | 給与・収入の仕組み | 月給の目安(2026年時点) |
|---|---|---|
| 横綱 | 月給+褒賞金・懸賞金など | 約300万円 |
| 大関 | 月給+褒賞金など | 約250万円 |
| 三役 | 月給+本場所特別手当など | 約180万円 |
| 幕内 | 月給+褒賞金など | 約140万円 |
| 十両 | 月給+褒賞金など | 約110万円 |
| 幕下 | 月給制ではなく場所手当 | 1場所あたり16万5000円(年額約99万円) |
| 三段目 | 月給制ではなく場所手当 | 1場所あたり11万円(年額約66万円) |
| 序二段 | 月給制ではなく場所手当 | 1場所あたり8万8000円(年額約53万円) |
| 序ノ口 | 月給制ではなく場所手当 | 1場所あたり7万7000円(年額約46万円) |
十両と幕下の間には、月収にして100万円以上の差があることがわかります。
十両未満は本当に「無給」なの?
「月給がない」という意味では事実
十両以上は月給制ですが、幕下以下にはそもそも「月給」という仕組みが存在しません。そのため「幕下以下は無給」という表現が広まっています。
しかし「収入が完全にゼロ」ではない
実際には、本場所ごと(年6場所)に支給される「場所手当」があり、加えて「幕下以下奨励金」という制度もあります。さらに各段優勝を果たせば賞金(10万〜50万円程度)を得るチャンスもあります。これらは日本相撲協会の事業報告書にも明記されている正式な制度です。
「無給」という言葉が広まった理由
一般的に「給料」といえば毎月決まった額が支払われる月給をイメージします。幕下以下は月給制ではないため、わかりやすく「無給」と説明されることが多いのです。しかし正確には「月給はないが、場所ごとの手当や奨励金はある」というのが実態です。
幕下力士の収入はどれくらい?
幕下は十両まであと一歩の階級ですが、待遇差は非常に大きいのが実情です。幕下の場所手当は1場所あたり16万5000円で、単純に年6場所分を積算すると年間約99万円、月換算では8万円ほどにしかなりません。実際にメディアで、幕下時代の年収は「150万円」だったと明かした元力士もいます(場所手当に加え、奨励金や優勝賞金など他の収入も合わせた金額とみられます)。いずれにせよ、月収100万円を超える関取との差は非常に大きいことがわかります。
幕下以下にはこの場所手当に加えて「幕下以下奨励金」も支給されるため、「無給」と一括りにはできません。ただし収入は月ごとに安定せず、生活の不安定さは否めません。
三段目・序二段・序ノ口の力士はどうやって生活する?
序ノ口・序二段・三段目の力士は、場所手当だけでは生活費を賄うのは困難です。しかし彼らが生活できているのは、相撲部屋で衣食住の多くがまかなわれる仕組みがあるからです。稽古や食事、住居はすべて部屋での共同生活の中にあり、一般の会社員のように自分で家賃や食費を負担する必要がありません。
とはいえ、個室が与えられるかどうかなど生活面の待遇は番付が上がるごとに変わっていきます。この差が「関取になりたい」という強いモチベーションにつながっています。
十両に上がると何が変わる?
十両昇進の最大の意味は「月給制になること」です。加えて個室が与えられる、身の回りの世話をする「付け人」がつくなど、生活面でも待遇が一変します。番付表ではわずか1段の違いでも、経済的・生活的には非常に大きな差があるのです。
力士には給料以外にどんな収入がある?
給料以外にも、力士には複数の収入源があります。
- 力士褒賞金:勝ち越しなどの成績に応じて支給される、十両以上を対象とした制度。
- 懸賞金:取組につく懸賞で、人気力士ほど獲得機会が増えます。
- 三賞:殊勲賞・敢闘賞・技能賞の受賞者に賞金が支給されます。
- 金星:平幕力士が横綱に勝った際の褒賞制度。
- 優勝賞金:幕内だけでなく十両・幕下など各段にも優勝制度があり、賞金が支給されます。
横綱・大関になると給料はいくら?
横綱・大関クラスになると、月給に加えて本場所特別手当、褒賞金、懸賞金、優勝賞金など複数の収入が重なり、年収は数千万円規模になることも珍しくありません。ここで注意したいのは、「月給」と「年収」は別物だということです。月給だけを見て年収を判断すると、実際の収入を大きく見誤ってしまいます。
力士の給料はなぜ番付でこんなに違う?
相撲は完全な実力主義の世界です。番付がそのまま収入に直結し、勝敗が生活そのものを左右します。中でも十両昇進は「人生の分岐点」といえるほど大きな意味を持ち、月給制への移行、関取としての待遇、メディア露出による副次的な収入増加など、あらゆる面で立場が変わります。逆に言えば、実力的には関取級であっても十両に上がれなければ待遇は大きく変わらないという、番付社会ならではの厳しさもあります。
2027年から力士の給与・手当がどう変わる?
日本相撲協会は2026年7月、給与・手当・優勝賞金の大幅な改定を発表しました。2027年1月の初場所から、以下のように引き上げられます。
月給(関取)
- 横綱:300万円 → 330万円
- 大関:250万円 → 275万円
- 三役:180万円 → 200万円
- 幕内:140万円 → 155万円
- 十両:110万円 → 120万円
優勝賞金
- 幕内:1000万円 → 2000万円
- 三賞:200万円 → 300万円
- 十両優勝:200万円 → 300万円
- 幕下優勝:50万円 → 70万円
- 三段目優勝:30万円 → 50万円
- 序二段優勝:20万円 → 30万円
- 序ノ口優勝:10万円 → 20万円
幕下以下の場所手当(1場所あたり)
- 幕下:16万5000円 → 18万円
- 三段目:11万円 → 12万円
- 序二段:8万8000円 → 9万5000円
- 序ノ口以下:7万7000円 → 8万2000円
これに加えて、白星1つごとに支給される「勝星金」や、勝ち越し時に支給される「勝越金」も増額されます(例:幕下の勝星金は3500円→4000円、勝越金は8000円→1万円)。
なお、関取の月給改定は2019年以来8年ぶり、優勝賞金の改定は1994年以来33年ぶりという久しぶりの大幅な待遇改善です。日本相撲協会は物価上昇を踏まえ、協会員の待遇改善や健康管理、国技館の維持に反映させるとしています。若手力士の待遇改善につながる改定として注目されています。
「力士は給料が安い」は本当?年収を考えるときの注意点
月給の額だけを見れば、幕下以下は確かに厳しい水準です。しかし年収を考えるときは、懸賞金・褒賞金・優勝賞金・三賞など複数の収入源を合わせて見る必要があります。特に人気のある関取であれば、月給以外の収入が大きな割合を占めることも珍しくありません。一方で、幕下以下と十両以上とでは収入の安定性そのものが大きく異なる点には注意が必要です。
まとめ|「十両未満=無給」は半分本当、半分誤解
最後にポイントを整理します。
- 十両以上は月給制、幕下以下は月給制ではない
- ただし幕下以下にも場所手当や「幕下以下奨励金」がある
- 各段優勝などの賞金を得るチャンスもある
- 相撲部屋での共同生活により衣食住はまかなわれる
- 十両昇進によって給与・待遇は劇的に変わる
- 2027年1月から給与・優勝賞金ともに大幅増額される予定
「十両未満は無給」という言葉は、月給がないという意味では正しい一方、収入が完全にゼロという意味では誤解です。番付が上がるほど収入も生活の安定性も増していく——それが大相撲という実力社会のリアルな姿と言えるでしょう。








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