大阪・西成の三角公園で、毎週木曜日に温かい食事を配り続ける男性がいる。ダルビッシュ翔さんだ。メジャーリーガー・ダルビッシュ有さんの弟として知られる一方、若い頃には11回もの逮捕歴を持つという経歴が明らかになっている。なぜ「ワルビッシュ」と呼ばれた過去を持つ彼が、今は西成で炊き出しを続けているのか。その理由と、彼が率いるボランティア団体「大阪租界」の活動実態を詳しく紹介する。
ダルビッシュ翔とは何者か
ダルビッシュ翔さんは、大リーグ・パドレスで活躍するダルビッシュ有投手の弟にあたる人物だ。1989年生まれ、大阪府羽曳野市出身で、ダルビッシュ三兄弟の次男にあたる。かつては「Dark翔」のリングネームで総合格闘技の舞台に立ち、その後はYouTuberとしても活動。現在は建設業の会社を経営する実業家として、また大阪でのボランティア活動に力を入れる人物として注目を集めている。兄弟関係の話題性も相まって、彼の一挙手一投足がたびたびメディアで取り上げられてきた。
「11回逮捕」の過去とワルビッシュと呼ばれた日々
翔さんの経歴で外せないのが、若年期からの非行の記録だ。翔さん自身が綴った自伝『悪名』(彩図社)や文春オンラインの報道によれば、最初の逮捕は中学3年生・14歳のとき。部活動の顧問への暴行や同級生への傷害容疑によるものだったという。この逮捕後は鑑別所を経て、福井県にある更生施設「はぐるまの家」に一時入所した経験を持つ。少年時代から非行を繰り返し、成人後も複数回の逮捕を経験。直近では2015年、26歳のときに野球賭博を主催した容疑で逮捕されたことが伝えられている。報道では、生涯での逮捕回数は11回とされている。こうした経歴から、彼は一部で「ワルビッシュ」という不名誉な呼び名で語られるようになった。
なぜ西成で炊き出しを始めたのか
そんな翔さんが2021年7月から始めたのが、大阪・西成での炊き出し活動だった。きっかけの一つには、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、それまで続けられてきた炊き出しの数が減少し、支援を必要とする人たちが取り残されている現実があったとされる。
翔さん自身は、自分や過去をともにした仲間たちが「これから社会にどう関わっていくのか」を考え抜いた末に、炊き出しという形にたどり着いたと語っている。単なる罪滅ぼしという言葉だけでは片づけられない、周囲や社会への向き合い方の模索が、この活動の出発点になっているようだ。
大阪租界とはどんな団体か
翔さんが立ち上げた団体が「大阪租界」である。公式サイトによれば、活動の中心は西成の三角公園での炊き出しだが、それだけにとどまらない。周辺地域での清掃活動や、高齢者施設への訪問活動なども関連活動として紹介されている。なお、大阪・アメリカ村などでのゴミ拾いは、翔さんの弟であるダルビッシュ賢太さんが個人的に継続している取り組みとして知られており、大阪租界本体の活動と混同しないよう注意したい。また「租界」という名称の由来については、現時点で公式な説明は確認できていない。
三角公園での炊き出しの実態
大阪租界の炊き出しは、毎週木曜日、西成の三角公園で行われている。メニューはカレー、牛丼、ビーフシチューなど日によって変わり、1回あたり数百食が用意される。2025年7月の取材では、通常で250〜300食、多い日には400食程度を用意していると翔さんが明かしている。調理や配膳はボランティアスタッフが担当し、翔さん自身も現場に立って利用者と直接向き合っているという。
「日本一のボランティアを目指す」という言葉の重み
翔さんは以前から「日本一のボランティアを目指す」と公言してきた。その言葉を裏付けるように、2025年7月時点で活動開始から4年目に突入し、通算での炊き出し回数は200回を突破。同年11月の報道では通算221回に到達したことが伝えられている。本人は「200回、300回という数字自体が目的ではない」とも語っており、回数の達成そのものよりも、毎週欠かさず続けていくという継続の姿勢にこそ意味を見出している様子がうかがえる。
なぜ毎週木曜日にこだわるのか
炊き出しは雨の日も台風が近づく日も、基本的に開催されるという。翔さんにとってこの活動は、もはや「完全に生活の一部」になっているそうだ。利用者との何気ない会話を重ね、「また来週ね」と言葉を交わす関係性を築くこと。それは一時的な支援ではなく、当たり前のようにそこにあり続ける存在になることを目指しているからだという。
活動費はどう賄っているのか
炊き出しを継続するうえで欠かせないのが資金や食材の確保だ。基本的には寄付による支援に支えられており、米や野菜などが提供されることも多いという。ただし寄付だけでは足りない場合、翔さんたちが自己負担で補うこともあるそうだ。近年の米価高騰は活動継続の課題ともなっており、今後はパンなど別の主食への切り替えも検討されていたと伝えられている。
大阪租界に集うメンバーたち
大阪租界には、翔さん自身と同じように過去に問題を抱えた経験を持つ人たちが多く参加しているという。文春オンラインの報道でも、スタッフの中に前科を持つ人が多いことが紹介されている。翔さんは「自分たちもはみ出しものだった」という自覚のもと、その経験を社会貢献に転換しようとしているようだ。ボランティアには子どもたちが参加することもあり、メンバーは入れ替わりながらも活動は継続されている。
「更生した」と言い切らない本人の姿勢
興味深いのは、翔さん自身が「完全に更生した」と簡単に言い切らない点だ。過去をなかったことにするのではなく、現在の行動を積み重ねることでしか示せないものがある、という考え方が根底にあるように見える。過去の仲間とともに活動を続けること自体が、彼にとっての社会との接点であり、単純な「罪滅ぼし」という言葉には収まりきらない現在進行形の営みなのだろう。
まとめ|過去と現在のギャップが示すもの
逮捕歴11回という過去を持つダルビッシュ翔さんが、なぜ西成で炊き出しを続けているのか。その答えは、彼自身の言葉と行動の積み重ねの中にある。仲間とともに大阪租界を立ち上げ、2021年から毎週木曜日という活動を粘り強く継続してきたこと。そして「日本一のボランティア」という言葉を掲げるだけでなく、実際に200回を超え、2025年時点で通算221回という回数を重ねてきたこと。過去の経験を否定するのではなく、それを社会との新しい関わり方へと変えていこうとする姿勢にこそ、この記事で紹介した活動の核心があると言えるだろう。




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