「お腹いっぱい焼肉を食べたい」というときに頼りになるのが焼肉食べ放題だ。定額料金で好きなだけ肉を焼ける手軽さから、ファミリーや学生を中心に長年支持されてきた業態でもある。しかし2026年、牛肉価格の高騰が焼肉業界を直撃している。大手チェーンでも価格改定が相次ぎ、SNSなどでは「このまま食べ放題は続くのか」「もう焼肉食べ放題はなくなるのでは」という不安の声も広がっている。本記事では、焼肉きんぐ・かみむら牧場の値上げ内容と、焼肉店の倒産動向をふまえながら、焼肉食べ放題の今後を整理する。
牛肉高騰で焼肉食べ放題がピンチに
アメリカ産牛肉の価格上昇が焼肉店を直撃
焼肉食べ放題を支えてきたのが、比較的安価に仕入れられてきたアメリカ産牛肉だ。ところが牛の主産地であるアメリカでの歴史的な干ばつによる生産減少と、歴史的な円安が重なり、輸入コストは急上昇している。特に人気部位のハラミは深刻で、2026年8月時点で、アメリカ産ハラミについて6月に約20%、さらに9月にも約18%上昇する見通しだとの声が焼肉店の現場から報じられている。ある焼肉食べ放題店では、ハラミの仕入れ価格が2年前のおよそ3倍にまで跳ね上がったとの報道もあり、店主が「いつまで店がもつか分からない」と漏らすほど厳しい状況だ。牛肉以外の肉として、比較的安価なラム肉を取り入れる店も出てきており、原材料の見直しは業界全体に広がりつつある。
焼肉食べ放題はもともと原価率が高いビジネス
牛肉は食材コストの中でも比重が大きく、食べ放題は「客がたくさん食べるほど原価がかさむ」構造のビジネスだ。そのため牛肉価格の上昇は、他業態以上に直接的に利益を圧迫する。値上げをためらえば赤字が膨らみ、値上げをすれば客離れのリスクを負う――焼肉食べ放題各店は、このジレンマの真っ只中にいる。
焼肉きんぐも値上げ!食べ放題はいくらになった?
「きんぐコース」は税込3,828円に
物語コーポレーションが展開する「焼肉きんぐ」は、2026年7月9日からグランドメニューを改定し、主力の「きんぐコース」を税込3,718円から3,828円へと110円値上げした。同店では2025年9月にも全コースを110円前後値上げしており、1年足らずでの再改定となる。
「プレミアムコース」は税込5,038円に
上位の「プレミアムコース」は税込4,818円から5,038円へと220円の値上げ。あわせて黒毛和牛を新たに食べ放題に加えるなど、内容面のリニューアルも同時に行われた。
単純な値上げではなく「高付加価値化」
注目したいのは、値上げと同時に「五大名物」などの看板メニューを刷新し、肉質やラインナップを充実させている点だ。値段を上げる代わりに満足度も引き上げる、いわば「高付加価値化」路線が、焼肉きんぐの値上げ戦略の特徴といえる。
かみむら牧場も値上げ!牛肉高騰だけが原因ではない
ワタミとカミチクグループの合弁で展開する「かみむら牧場」も、コース料金を改定している。現在の食べ放題コースは、カジュアルコース税込3,278円、ジャストミートコース税込3,828円、かみむら牧場コース税込4,598円、最上位の「さつま和牛コース」税込5,368円という構成だ。最上位コースはかつて「和牛マニアコース」という名称で税込4,818円〜5,038円程度で提供されていたが、2026年に入りコース名・価格ともに改定されている。
値上げの背景として同社が挙げるのは、原材料価格だけではない。エネルギー費、物流費、人件費など店舗運営コスト全体の上昇が重なっており、「牛肉だけが高くなったから値上げした」わけではないことが分かる。焼肉食べ放題の値上げは、牛肉高騰と複合的なコスト増が同時に押し寄せた結果と見るべきだろう。
焼肉店の倒産も過去最多に
2025年度は57件、2年連続で過去最多
東京商工リサーチによると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の焼肉店倒産は57件(負債1,000万円以上)に達し、前年度の50件を上回って2年連続で過去最多を更新した。倒産のうち約9割は資本金1,000万円未満の小・零細店舗が占める。倒産理由の多くは販売不振で、値上げが客離れを招き売り上げが落ち込む悪循環が指摘されている。
なぜ大手チェーンと個人店で明暗が分かれるのか
同じ焼肉業界でも、焼肉きんぐを運営する物語コーポレーションは増収増益を続け、最高益更新が見込まれるなど絶好調だ。大手は大量仕入れによるスケールメリットや、メニュー開発・価格戦略の選択肢の多さが強み。一方、個人店は仕入れ価格の上昇を吸収する余力が乏しく、価格競争でも不利になりやすい。牛肉高騰という同じ逆風を受けながら、大手チェーンと個人店の明暗がくっきり分かれているのが今の焼肉業界の姿だ。
「焼肉食べ放題」がなくなる可能性はある?
食べ放題そのものがなくなる可能性は低い
焼肉食べ放題は集客力が非常に高く、ファミリー層から学生まで幅広い客層を取り込める強力な業態だ。会計額があらかじめ確定するという安心感も、物価高の時代にはむしろ武器になる。こうした強みを踏まえると、「焼肉食べ放題」という業態そのものが消える可能性は低いとみられる。
ただし「食べ放題の値段」は上がっていく可能性
一方で、店側が原価上昇をいつまでも自社努力だけで吸収し続けるのは難しい。3,000円台が当たり前だった食べ放題は4,000円台へ、上位コースは5,000円超えが珍しくなくなりつつある。今後も年1〜2回ペースでの価格改定が続く可能性は十分にある。
メニュー構成が変わっていく可能性
もう一つの変化の方向性が、メニュー構成の見直しだ。牛肉一辺倒ではなく豚肉・鶏肉・ホルモンの比率を高めたり、野菜やサイドメニューを充実させたりする動きが広がっている。高級な牛肉部位は上位コース限定にするなど、コースごとの棲み分けもより明確になっていきそうだ。
それでも「焼肉食べ放題」が強い理由
定額制であることは、家族連れにとって利用のハードルを下げる大きな要因だ。「好きなものを好きなだけ」食べられるという体験価値も、他業態には代えがたい魅力といえる。実際、焼肉の和民は2026年6月、学生向けの70品90分食べ放題を2,800円から2,500円へと値下げしており、物価高の中でも「食べ放題を武器に集客する」戦略を続けるチェーンもある。値上げが即「食べ放題の終わり」を意味するわけではない。
まとめ|焼肉食べ放題は「終了」ではなく「値上げ・二極化」へ
牛肉高騰によって焼肉食べ放題が完全になくなる、というシナリオは考えにくい。むしろ実際に進んでいるのは、価格を上げながらメニューやサービスの質を高めて生き残りを図る大手チェーンと、価格転嫁が難しく苦境が続く個人店との「二極化」だ。焼肉きんぐやかみむら牧場のような大手は値上げと同時に高付加価値化を進める一方、街の個人店では倒産・廃業が過去最多ペースで続いている。焼肉食べ放題を楽しみ続けるためには、こうした業界構造の変化を頭に入れておくとよいだろう。






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