大阪府で、介護福祉士の国家資格を持つ外国人が「介護ビザ」で働く人数が全国最多となったことが話題になっています。
全国的には技能実習や特定技能による受け入れが多い中、なぜ大阪だけが「介護福祉士」の育成で全国をリードしているのでしょうか。
この記事では、
- 外国人介護福祉士が増えている理由
- 大阪が全国1位になった背景
- 介護ビザとはどのような制度なのか
- 日本の介護業界が抱える人材不足の現状
について分かりやすく解説します。
外国人介護福祉士が全国最多になった大阪府の現状
出入国在留管理庁のデータによると、令和7年6月末時点で在留資格「介護」を持つ外国人は大阪府で2,853人となり、東京都の1,761人を大きく上回って全国1位となりました。これは全国の約2割に相当する数字です。
全国的に見ると、外国人介護人材の受け入れは学歴を問わない技能実習や特定技能が主流です。その中で大阪府だけが、介護福祉士の国家資格を取得した人材の受け入れで突出しているのが特徴です。
なぜ大阪に外国人介護福祉士が集中しているのか?
背景の一つとされているのが、大阪市大正区に本部を置く医療法人敬英会の存在です。同法人は2009年頃からベトナムやフィリピンとのEPA(経済連携協定)による介護福祉士候補者の受け入れを開始し、その後もベトナムの大学と連携した独自の留学生受け入れルートを構築してきました。
- 現地大学との連携による人材リクルート
- 来日後の日本語学校への通学支援
- 介護福祉士養成校への進学支援
- 学生寮の提供やアルバイト先の紹介
- 国家資格取得後の法人内就職までの一貫サポート
こうした「入口から就職まで」を切れ目なく支える体制が、長期的に定着する外国人介護福祉士を安定的に生み出す土台になっています。
さらに2018年頃からは、大阪府内の複数の介護老人保健施設が参加する「大阪介護留学支援プログラム」も始動しました。日本語学校から養成校進学を目指す学生や、養成校に直接入学する留学生を複数の法人が共同で受け入れる仕組みで、これまでに多くの留学生が介護福祉士資格を取得しています。単独の法人だけでなく、業界全体で人材育成に取り組んできたことが、大阪の強みにつながっているといえるでしょう。
「介護ビザ」とは?技能実習・特定技能との違い
外国人が介護分野で働くための在留資格には、主に次の4種類があります。
- EPA(経済連携協定):インドネシア・フィリピン・ベトナムとの協定に基づく受け入れ
- 在留資格「介護」(介護ビザ):介護福祉士の国家資格を取得した人材向け
- 技能実習:母国への技能移転を目的とした制度
- 特定技能:人手不足分野における専門人材の受け入れ制度
このうち「介護ビザ」は、介護福祉士養成校を卒業するなどして国家資格を取得した人材のみが対象となる点が特徴です。取得のハードルが高い分、次のようなメリットがあります。
- 日本語能力が高い(養成校入学時点でN2相当が目安)
- 就労期間の制限がなく更新すれば長期就労が可能
- 家族の帯同(配偶者・子など)も認められる
- 現場ですぐに専門的な介護業務を任せられる即戦力人材
技能実習や特定技能に比べて在留期間の制約が少なく、施設側にとっても「長く働いてもらえる人材」として採用しやすいという利点があります。
なぜ介護福祉士の国家資格取得が重視されるのか?
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格です。資格を持つ外国人材を採用することで、施設側には次のような安心感があります。
- 身体介護に関する専門知識・技術が保証されている
- 認知症ケアなど専門性の高い対応ができる
- 利用者や家族とのコミュニケーション能力が一定水準にある
- 無資格・未経験の人材より現場教育の負担が少ない
無資格者を一から育てるよりも、国家資格を持つ人材を採用するほうが施設運営の面でも効率的であり、これが大阪の施設が資格取得支援に力を入れる理由の一つになっています。
日本の介護業界はなぜ深刻な人材不足なのか?
日本の介護業界が外国人材を必要とする背景には、次のような構造的な要因があります。
- 少子高齢化の進行:支える側の現役世代が減り続けている
- 高齢者人口の増加:要介護・要支援認定者数は年々増加傾向
- 若年労働者の介護離れ:他業種と比較した賃金水準や労働環境への懸念
- 離職率の高さ:身体的・精神的負担の大きさから定着しづらい
- 他業種との人材確保競争:人手不足はどの業界も同様で採用が難航
厚生労働省も将来的な介護人材の需給ギャップを見込んでおり、国内人材だけで必要な人員を確保することが年々難しくなっています。こうした状況の中で、専門性の高い外国人介護福祉士は、単なる労働力の穴埋めではなく、質の高い介護サービスを維持するための重要な担い手として期待されています。
外国人介護人材の受け入れには賛否もある
外国人介護人材の受け入れ拡大については、さまざまな意見があります。
賛成・肯定的な意見
- 深刻な人材不足を補うことができる
- 国家資格を持つ人材のため、サービスの質を維持しやすい
- 利用者への丁寧な対応ができる人材が増える
反対・慎重な意見
- 特定の国や人材への依存が強まることへの懸念
- 外国人材の受け入れ拡大より先に、日本人介護職員の待遇改善を優先すべきという声
- 言語や文化の違いによる現場でのコミュニケーション上の課題
どちらの意見にも一理あり、外国人材の受け入れと日本人職員の処遇改善は、対立する選択肢ではなく、両輪で進めるべき課題だと考えられます。
今後は「量」より「質」の外国人介護人材育成がカギ
今後の外国人介護人材の受け入れでは、単に人数を増やすだけでなく、次のような「質」を重視した取り組みが重要になってきます。
- 国家資格取得を前提とした計画的な育成支援
- 就職後の定着支援(生活面・メンタル面のフォロー含む)
- 継続的な日本語教育の提供
- ユニットリーダーなどキャリアアップの道筋づくり
- 施設単独ではなく複数法人・業界団体による連携育成
大阪府で見られるような「留学から就職までを一体で支える」モデルは、他地域の介護施設や自治体にとっても参考になる可能性があります。人材の量を追うだけでなく、長く現場で活躍できる専門人材を育てる視点が、今後の介護業界全体の課題解決につながっていくでしょう。
まとめ
- 大阪府は介護福祉士資格を持つ外国人の在留者数が全国最多となった
- 背景には医療法人敬英会をはじめとした法人による長年の育成・支援体制がある
- 介護ビザは国家資格を取得した専門人材向けの制度であり、技能実習や特定技能とは性質が異なる
- 日本の介護業界は少子高齢化などを背景に深刻な人材不足に直面しており、外国人介護福祉士は重要な担い手となっている
- 外国人材への依存だけでなく、日本人介護職員の待遇改善や働きやすい環境づくりを同時に進めることが、介護業界の持続的な発展には欠かせない


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