2026年5月10日、GLION ARENA KOBEで開催されたRIZIN.53。セミファイナルに登場した平本蓮は、1年10ヶ月のブランクを経て復帰戦を戦い、皇治とドロー決着。
しかしその直後、試合後マイクで飛び出した言葉が、会場をどよめかせた。「おい久保優太!テメェ俺と9月やれよ、ぶっ殺してやるよ!」。なぜ平本は久保を指名したのか。この宣戦布告が意味するものとは何か。徹底的に読み解いていく。
1年10ヶ月ぶり復帰戦、その直後に飛び出した”次の標的”
平本蓮が格闘技ファンの前に帰ってきた。2024年7月、超RIZIN.3で朝倉未来を1RでTKO降しして以降、怪我による長期離脱を余儀なくされていた平本。実に1年10ヶ月ぶりとなる復帰の場に選ばれた相手は、同じく久々の実戦となる皇治だった。
試合は無差別級スタンディングバウト特別ルールで3ラウンド実施。注目されたのはその体重差。平本が79.85kg、皇治が68.60kgと、実に11.25kgもの開きがあった。1Rから平本は軽快なステップワークとキレのあるパンチを的確に当てていき、ブランクを感じさせないシャープな動きを見せた。2R・3Rも試合の主導権は終始平本が握り、強烈なボディーも皇治に入る場面があった。
しかし皇治は最後まで「倒れなかった」。鼻から出血しながらも果敢に前に出続け、KOのみの特別ルールのため規定によりドロー決着。平本にとっては”消化不良”とも言えるスッキリしない幕切れだった。
そして、ここからが本番だ。試合後にマイクを持った平本の口から、突如として一つの名前が飛び出す。
「本番は9月なんで、そこで全部の本気を見せたいなと思ってて。おい久保優太!テメー俺と9月にやれよ、ぶち殺してやるよ」
9月10日に京セラドーム大阪で開催される「超RIZIN.5 浪速の超復活祭り」への公開オファーだった。会場は騒然となり、SNSでは瞬時にこの発言が拡散。「平本✕久保」という組み合わせが、格闘技界のトレンドワードを席巻することになった。
なぜ平本蓮は”久保優太”を選んだのか
ここで多くのファンが抱いた疑問がある。
「なぜ朝倉未来ではないのか」
そしてそれ以上に、「なぜ久保優太なのか」という点だ。
平本にとって朝倉未来は超RIZIN.3で倒した相手であり、因縁という意味では最大の相手だった。しかし朝倉はすでにキャリアの岐路に立っており、次戦の相手として設定しにくい状況にある。そのなかで平本が選んだのが、”実力は折り紙付きだが評価が割れている”久保優太という存在だった。
この二人には興味深い共通点がある。どちらも「打撃センスが突出しており、試合のIQが高い」と評価される一方で、「ここぞの場面で決め切れない」という批評を受け続けてきた。久保はK-1やGLORYで世界を獲った立ち技の天才でありながら、MMA転向後はフェザー級の強豪たちに苦しめられるシーンも見せてきた。平本は朝倉未来という”モンスター”を倒した実績を持ちながら、今回の皇治戦でKOできなかった事実が残る。
- どちらも「センス型」の打撃ファイター
- どちらも「決め切れなさ」への批判を受けてきた
- どちらも「実力はある、でも評価が定まらない」という立ち位置
- 試合が実現すれば「答え合わせ」になる構図
平本がこのタイミングで久保を指名したのは、単純な話題作りではないはずだ。自分と同じ「評価が確定していない選手」に勝つことで、改めて自らの実力を証明しようという強い意図が読み取れる。

久保優太という”最も厄介な相手”
久保優太(1987年生まれ)は、日本格闘技史に名を刻む立ち技の猛者だ。2005年にキックボクサーとしてプロデビューし、2012年にISKA世界ライトウェルター級王座、2013年に初代Krush -67kg王座とGLORYフェザー級SLAM世界トーナメント優勝、そして2017年には初代K-1 WORLD GPウェルター級王座を獲得。立ち技格闘技の世界でトップに君臨し続けた。
18年近く研鑽してきた打撃技術はMMAの世界でも本物だ。2021年にRIZINと契約してMMAに転向した久保は、「刺激が無いのでボクシングを考えたが、総合格闘技の方が技が多彩で戦略性が高く、ロジカルで魅力がある」と述べており、MMAへの適応に強い意欲を持って取り組んできた。
MMA転向後の久保は順風満帆とは言えないキャリアを歩んでいる。シェイドゥラエフという12戦無敗の絶対王者に2度敗れる経験もしている。しかし、2024年の超RIZIN.3では元フェザー級王者・斎藤裕を2RにキックでKO降し、「MMAでもやれる」という確かな手応えをつかんでいる。
- 元K-1 WORLD GP王者・複数のキック系タイトル保持者
- MMA転向後、斎藤裕をKOで撃破する大金星
- 立ち技の引き出しが多く、距離感・タイミングが独特
- 精神的にタフで試合終盤まで諦めない姿勢(RIZIN.49でも最後まで戦い続ける意志を見せた)
つまり久保優太は「打撃では互角以上の可能性がある」うえに「簡単には崩れない」という、平本にとって本質的な部分を試される相手なのだ。
平本蓮は今回の復帰戦で何を証明できたのか
正直に言えば、今回の皇治戦は平本にとって「完全勝利」とは言えない内容だった。KOのみの特別ルールで、体重差11kg以上の相手を倒せなかった事実は重い。しかし、それだけで語り切れない部分も確かにある。
| 評価ポイント | 内容 | プラス/マイナス |
|---|---|---|
| 動きのキレ | ブランク明けとは思えない軽快なステップ | ✅ プラス |
| 打撃精度 | 1Rからパンチを的確に当て続けた | ✅ プラス |
| 試合コントロール | 終始ペースを握り続けた | ✅ プラス |
| フィニッシュ力 | KOできず、皇治を最後まで倒せなかった | ❌ マイナス |
| ルール適性 | MMAでない特別ルールのため、真の実力測定は難しい | ⚠️ 留保 |
平本自身もマイクで「つまんなくてすみません」「本番は9月」と語っており、今回はあくまでブランク明けの”調整”と位置付けていた節がある。重要なのは、この試合で「壊れていない」ことを見せ、9月の本番につなげることだった。
その意味では、「完全復活のお墨付き」を得るのは久保優太戦を経てから——という構図が自然と出来上がっている。
SNSではすでに”実現待望論”が渦巻く
平本の宣戦布告が報じられると、SNSは即座に沸騰した。「これは見たい」「早く実現してくれ」という声が殺到し、RIZIN関連のワードが軒並みトレンド入り。格闘技ファン以外にも広くこのカードへの関心が広がりを見せた。
- 「打撃対決として最高の絵が見える」という期待感
- 「平本のマイクパフォーマンス×久保のロジカルな返し」という口撃戦への期待
- 「評価が割れている者同士の決着戦」という構図への共感
- 「どちらが勝っても次のストーリーが生まれる」という面白さ
RIZINにとってもこのカードは大きな意味を持つ。朝倉未来が引退し、かつての”ドル箱カード”が失われた今、平本蓮を中心とした新しい主役争いは不可欠だ。久保優太という「話題性と実力を兼ね備えた男」との対戦は、9月の京セラドーム大阪大会を盛り上げる起爆剤になりうる。
久保優太はSNSでも活発に発信しており、独自の語り口と格闘技への真摯な姿勢でファン層を持つ。平本のアウトサイダー的なカリスマ性と、久保のロジカルな語りが衝突すれば——記者会見の段階からすでに”試合”が始まる。
実現した場合、勝負のポイントはどこか
仮に「超RIZIN.5」で平本蓮✕久保優太が実現した場合、勝負の焦点はどこになるのか。純粋に格闘技的な視点から考えてみたい。
| 項目 | 平本蓮 | 久保優太 |
|---|---|---|
| 打撃スタイル | 爆発的な連打、ボディ攻撃 | 長いリーチ、蹴りとパンチの複合 |
| MMA経験 | 朝倉未来TKO勝利など豊富 | 転向後5年、斎藤裕KO勝利 |
| 組み技 | テイクダウン防御に課題も | グラウンドが弱点とも言われる |
| フィニッシュ力 | 強烈だが”詰め切れない”面も | KO決着が少なくないが試合巧者 |
| メンタル | 煽り・プレッシャーに強い | 負けを恐れない姿勢、”最後まで諦めない”信条 |
最大の見どころは「打撃戦になるかどうか」だ。久保は立ち技に18年のキャリアを持ち、距離の取り方と蹴りのタイミングが独特。平本は近距離の爆発力が武器だが、久保のリーチと蹴りが障壁になる可能性がある。
逆に平本が距離を詰めてパンチを被弾させれば、久保のKO耐性が問われる展開になる。組み技・寝技の局面では、どちらも決して得意と言えないだけに、接近戦でのグラウンドの攻防が勝負の分岐点になりそうだ。
そしてもう一つ——メンタル戦と駆け引きが鍵になる。平本の”圧”と久保の”論理的な返し”がぶつかり合うプロモーション戦も含めて、この試合は幕が開く前から激しい戦いになるはずだ。

RIZINの今後にも影響する一戦になる?
この対戦が実現するとすれば、それはRIZIN全体の構図を塗り替える可能性を秘えている。
朝倉未来の長期離脱・引退報道が相次いだ今、RIZINは「次の顔」を必要としている。平本蓮はすでにそのポジションの最有力候補だ。しかし”朝倉未来に勝った男”という肩書きだけでは、長期的な主役にはなれない。久保優太という実力者を鮮烈に倒すことで初めて、「平本蓮時代」が本当に始まると言えるだろう。
一方の久保優太も、このオファーを受けることで新たなストーリーラインの主役になりえる。仮に勝利すれば、「平本を倒した男」として評価が一変する。格闘技界において”評価が割れた選手”が一発逆転する最大のチャンスが、この一戦だ。
RIZINにとっても、京セラドーム大阪という舞台に相応しいビッグカードが生まれる。フェザー級の主役争い、新世代対決。
あらゆる意味でこのカードは「2026年のRIZINを象徴する一戦」になりうる。
まとめ|宣戦布告は”本物証明”への宣言だ
RIZIN.53後の平本蓮による久保優太への宣戦布告は、単なる話題作りではない。ドロー決着という”消化不良”の後に、「次は本気を見せる」という意思表明として読み解くべきだ。
久保優太はK-1という世界最高峰の立ち技格闘技で頂点を獲り、MMAでも斎藤裕を倒した本物の強者。この男を正面から倒すことができれば、平本蓮の「本物の実力」に誰も疑問を持てなくなる。
超RIZIN.5・京セラドーム大阪。この大舞台で二人が相まみえる日が来るとすれば、RIZIN格闘技史に残る一夜になるかもしれない。



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