運命を変えた原宿でのスカウト
松本まりかの芸能界デビューは、まさに偶然だった。中学2年生のとき、友人と原宿へ買い物に出かけた際にスカウトされたのがきっかけだ。
当時は芸能界に強い興味があったわけではなく、「とりあえずやってみよう」という軽い気持ちで芸能界入りを決意したという。
中学時代の松本は頻繁にスカウトされており、1日に二桁のスカウトを受けることもあったほどの美少女だったそうだ。しかし、タレントになりたいのか女優になりたいのかも定まっておらず、かなりの数のオーディションに落ち続けた。そんな中、2000年にNHKテレビドラマ『六番目の小夜子』で女優デビューを果たす。当時15歳、中学3年生のことだった。高校受験と撮影時期が重なり、大変な時期を過ごした。
このドラマには山田孝之、山崎育三郎、鈴木杏、栗山千明など、後に大物俳優となるメンバーが多数出演しており、今でもファンの間で語り継がれる作品となっている。
デビュー当時の松本は、ティーン向けファッション雑誌『ピチレモン』の専属モデルとしても活動。宮崎あおいらとともに同誌の黄金期を築いた。また、声優としても活躍し、ゲーム『FINAL FANTASY X』のリュック役を演じるなど、若い頃から多才ぶりを発揮していた。
18年間続いた孤独な下積み時代
華々しいデビューを果たしたかに見えた松本まりかだが、その後の道のりは決して平坦ではなかった。同世代の宮崎あおいや蒼井優、山田孝之らが次々とブレイクしていく中、彼女だけが長い下積み時代を過ごすことになる。
「デビュー以降、複数の話題作に出演するも、なかなか大きなブレイクを果たすことができないでいた」という状況が続き、芝居をしている間は集中しているものの、それ以外の時間は居場所がなく、自分のことを認めてあげることができずにいたという。
25歳のとき、松本は大きな焦りを感じたと後に語っている。「このままじゃ何もない人になってしまう」という危機感だった。声優の仕事が多く、女優としての仕事は圧倒的に少なかった。仕事はほとんどなく、お金もギリギリの状態が続いた。
売れない時代が長かったことで、松本はネガティブな考えをすることが多くなり、自己肯定感を失っていった。この時期の経験が、彼女の人間性に深く影響を与えることになる。
しかし彼女は、この下積み時代を「美談にしたくない」と明確に語っている。「正直、もっと早く色々なことに気づいて花開いていたかったなと思うし、やっぱり20代で色々な役をできたほうがいい。私はここに辿り着くまでに本当に時間がかかっちゃった」と率直に振り返る。
それでも彼女は、「時間をかける必要なんてないよ。自分が本当に生きたいと思う道を生きてほしい」というメッセージを伝えるために、この経験があったのだと前向きに捉えている。
33歳でのブレイク「あざとい」演技が転機に
松本まりかの運命が大きく変わったのは、2018年放送のドラマ『ホリデイラブ』だった。女優デビューから18年、33歳での出来事である。
彼女が演じた井筒里奈役の「あざと可愛い」キャラクターが注目を集め、ドラマ初回放送後、松本のInstagramはフォロワー数が4,000から一気に5倍に増加。ネット掲示板でも3,000件以上のコメントが寄せられるなど、SNSで大きな話題となった。同年8月に発表された「Yahoo!検索大賞2018」では、女優部門の中間発表で上位3名に入るほどの注目度を集めた。
2019年には、女優人生19年目にして初めての賞となる「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019・ニューウェーブアワード女優部門」を受賞。遅咲きの女優として、ついに花開いたのだ。
「あざとい」という評価については、松本自身も認識している。鏡月焼酎ハイのCMで物議をかもした際には、「私は興味を持たれない時期が長かったので、逆に興味を持たれなくなることのほうが恐ろしい」と語り、批判も含めて注目されることの価値を理解していることを示した。
長い下積み時代を経験したからこそ、彼女は「運とタイミングを絶対逃しちゃいけない」という強い覚悟を持ち、チャンスが来たときに全力で掴み取ることができたのだ。
松本まりかの結婚観と恋愛観
現在40代の松本まりかだが、まだ結婚はしていない。彼女の結婚観は非常にユニークで、強い自立心に基づいている。
もともと結婚願望はなかったという松本だが、35歳頃から「ホントに最近になって、結婚したいと思うようになった」と心境の変化を語っている。しかし「いつかは結婚したいと思っているが、かと言って、なかったらなかったでもいい」という自然体なスタンスを貫いている。
松本の結婚観で特徴的なのは、「本当に好きで尊敬できる人と出会いたい」という明確な基準だ。結婚相手に求めるだけでなく、そういった相手と出会えるように自らも成長し、努力し、自分磨きを続けていることを明かしている。
「自立心がすごく強くて、男の人に依存するのがイヤ」と語る松本は、「私がちゃんと仕事をして稼いで、自分の足で立っているという状態にならないと、子どもはお母さんを尊敬してくれないし、育たない」と考えている。自分が満足できる女優になるまでは結婚しないという覚悟を持っているのだ。
理想の男性像については、「地味な方がいい」「全然大丈夫だよっていう大らかな人、包容力のある人」と語っており、派手さよりも安心感や穏やかさを求めている。好きなタイプとして挙げているのは、「頭が良い」「言葉が綺麗」「紳士的」「誠実」「自分の意思をしっかり持っている」といった項目で、理想は高いことを自認している。
一方で、恋愛になると「視野が狭まり一直線で重くなる」「相手に完璧を求めてしまう」という自己分析もしている。友人の松田ゆう姫からは「重いのかな」と指摘されたこともあるという。これも長い下積み時代での自己肯定感の低下が影響していると考えられる。
子供については「絶対欲しい」と語っており、いつか理想の相手と出会い、自分も成長できたときには結婚を選択する可能性は十分にある。
交友関係から見る松本まりかの人柄
松本まりかの交友関係を見ると、彼女の人柄が見えてくる。
最も有名なのは、石原さとみとの親友関係だ。2人はプライベートで一緒に旅行に行く写真をSNSによく投稿しており、「実は親友関係でおどろいた仲良し女優ペア」ランキングでは2位にランクインするほど注目されている。
また、デビュー作『六番目の小夜子』で共演した山田孝之とは、20年以上の付き合いがある。お互いに「たかゆき」「まりか」、あるいは「た」「ま」と呼び合うほど仲が良く、幼馴染のような関係だという。2022年には21年ぶりに夫婦役で共演を果たしている。
松本自身が「同期」として紹介しているのは、宮崎あおい、蒼井優、栗山千明といった実力派女優たち。「みんなは16、17歳でブレークしていって、私は20年間、その人たちを見てた」と語りながらも、嫉妬することなく友人関係を維持できているのは、彼女の人間性の強さを表している。
このように、長い下積み時代を経験しながらも人間関係を大切にし、周囲に嫉妬せず、できることをコツコツ積み上げてきた姿勢が、今の松本まりかを作り上げているのだろう。
まとめ
松本まりかは、偶然のスカウトから始まった芸能人生で、18年もの長い下積み時代を経験した。「あざとい」と評される演技でブレイクを果たした彼女だが、その裏には並々ならぬ努力と、自分を見失わない強さがあった。
結婚については強い自立心に基づいた独自の価値観を持ち、理想の相手と出会うために自分を磨き続けている。40歳を迎えた今も、女優としてさらなる高みを目指しながら、人生の選択肢を広げている。
遅咲きだからこそ伝えられるメッセージを持つ松本まりか。彼女の今後の活躍と、プライベートでの幸せにも注目が集まる。


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