突然のシステム障害で多くの介護施設が窮地に
2025年10月19日、多くの介護施設や医療機関が日常的に利用している通販サービス「アスクル」が、突如として全面的な利用停止に陥りました。原因はランサムウェア感染による大規模なシステム障害です。
この事態により、全国の介護施設では緊急に必要なオムツや介護用品の発注ができなくなり、現場は混乱の渦中にあります。「明日使うオムツがない」「在庫が底をつきそう」——そんな切実な声が、各地の介護現場から聞こえてきます。
アスクルのシステム障害の詳細、復旧の見通し、そして今すぐ実践できる代替調達方法について、介護施設の実務担当者の視点から徹底解説します。
アスクル障害の全容|なぜこれほど深刻なのか
ランサムウェア攻撃による物流システム停止
今回のシステム障害は、サイバー攻撃による「ランサムウェア感染」が直接の原因です。攻撃は主に物流システム(WMS:倉庫管理システム)に影響を及ぼし、商品の入荷から在庫管理、出荷までの全工程が停止しています。
アスクルの公式発表によれば、基幹システムは問題なく動作しているものの、「少量多品種を扱う業態で在庫管理が複雑」なため、手作業による出荷作業の実施は困難な状況が続いています。
停止しているサービスの範囲
現在、以下のサービスが全面的に停止しています:
- 受注業務の完全停止 – Webサイトでの注文、FAX注文ともに受付不可
- 出荷業務の停止 – 10月21日時点で未配送の注文は順次キャンセル
- 新規会員登録の停止
- 返品・領収書郵送などの各種サービス停止
- 医薬品に関する問い合わせ・受注停止
- 問い合わせ窓口の大幅縮小 – 営業時間:月〜土曜9時〜18時(日祝休業)
関連企業への波及影響
アスクルの物流子会社「ASKUL LOGIST」が同じシステムを使用していたため、無印良品のネットストア、ロフトのECサイト、ネスレ日本の通販サービスなど、多くの関連企業にも影響が波及しています。
介護施設が直面している深刻な問題
オムツ不足の切迫した現実
介護施設にとって、紙オムツや尿取りパッドは「ライフライン」です。利用者の尊厳と健康を守るために、1日たりとも欠かすことができません。
アスクルを主要な調達先としていた施設では、以下のような問題が発生しています:
- 在庫の急速な減少 – 通常1週間〜2週間分の在庫しか持たない施設が多い
- 利用者ごとの適合商品が調達できない – サイズや吸収量が異なる多様な商品を一括で管理していた施設ほど混乱
- 予算管理の困難 – アスクルの請求システムに依存していた施設では、急な仕入れ先変更で会計処理が複雑化
- 発注業務の属人化による混乱 – アスクル一本で運用していたため、代替ルートの知識がない
介護用品全般の調達難
オムツだけではありません。手袋、清拭シート、口腔ケア用品、洗剤、消臭剤など、日常的に消費する衛生用品全般の調達に支障が出ています。
特に、複数の利用者を抱える施設では、1日に何十箱ものオムツを消費することもあり、代替調達先を見つけても物流の関係で即日配送が難しいケースが多発しています。
アスクル復旧のめどは立っているのか
公式発表の現状
2025年10月28日現在、アスクルからは「復旧の具体的な時期は未定」との発表にとどまっています。同社は外部のセキュリティ専門機関や警察と24時間体制で連携し、段階的な復旧作業を進めているとしていますが、明確なスケジュールは示されていません。
復旧を遅らせている要因
一般的なシステム障害と比べて復旧に時間がかかる理由として、以下の点が挙げられます:
- データの安全性確認 – ランサムウェアによる暗号化や改ざんの有無を徹底調査する必要がある
- バックアップシステムの検証 – バックアップデータ自体が感染していないかの確認作業
- セキュリティ強化の実施 – 再発防止のため、システム全体のセキュリティ見直しが必須
- 物流システムの複雑さ – 在庫管理や配送ルートの最適化など、WMSの再構築には高度な技術が必要
専門家の見解では、このような大規模なランサムウェア被害からの完全復旧には、最短でも数週間、場合によっては数カ月を要する可能性があります。
今すぐできる!介護施設のための緊急調達
代替通販サイトの活用
アスクルが利用できない今、以下の代替サービスが介護施設にとって有効な選択肢となります:
1. たのめーる(ケアたのめーる)
- 法人利用なら200円以上で送料無料
- 最短当日または翌日配送
- 介護用品専門カテゴリーが充実
- インターネット・カタログ両方から注文可能
2. ケアサポート・わ
- 介護施設向け共同購入プラン
- 利用者一人ずつの納品書・請求書・領収書が同封される
- 7,000円(税込)以上で送料無料
- 電話、FAX、メールで注文可能
3. モノタロウ
- 3,500円(税別)以上で配送料無料
- 請求書払いに対応
- 最短即日出荷
4. 楽天市場・Amazon
- 大手ECサイトも緊急時の選択肢に
- 翌日配送可能な商品が豊富
- 法人アカウントでの利用も可能
地域の医療・介護用品店への直接訪問
緊急性が高い場合は、地域の店舗への直接訪問も検討しましょう:
- ドラッグストア – カインズ、マツモトキヨシなど大型店舗には業務用商品の在庫がある場合が多い
- 医療・介護用品専門店 – 地域の専門店は配送手配や大口購入の相談に応じてくれることが多い
- 卸売業者への直接コンタクト – メーカー系列の卸売業者に直接相談することで、緊急配送を手配できる可能性がある
メーカー直販ルートの確保
大手メーカーでは、介護施設向けの直販ルートを持っているケースがあります:
- ユニ・チャーム – ライフリーシリーズ
- 大王製紙 – アテントシリーズ
- 花王 – リリーフシリーズ
- 日本製紙クレシア – ポイズシリーズ
各メーカーのお客様相談室に連絡し、緊急調達の可能性を相談してみましょう。施設の規模や使用量によっては、直接取引の道が開ける場合があります。
複数発注先の分散管理体制を構築
今回の教訓を活かし、今後は以下の体制を整えることをお勧めします:
- メイン発注先+予備発注先を2〜3社確保
- 緊急時連絡先リストの作成 – 各取引先の電話番号、担当者名、営業時間を一覧化
- 在庫管理の見直し – 最低2週間分の安全在庫を確保
- 発注業務の標準化 – 誰でも発注できるマニュアルの整備
困ったときのリアルな声|介護現場のエピソード
「土曜日に在庫切れが判明して…」
ある特別養護老人ホームの事務担当者は語ります。
「いつもならアスクルで金曜に発注すれば土曜に届くので、在庫管理はそれほど気にしていませんでした。でも今回、土曜日の朝に『明日分のオムツがギリギリしかない』と介護スタッフから連絡があって。日曜は多くの店が休みで、本当に焦りました。結局、近隣の24時間ドラッグストアを3軒回って、何とか必要量を確保できましたが、通常の3倍近い出費になりました」
「利用者さんに合うサイズが見つからない」
デイサービスセンターの看護師からは、こんな声も。
「私たちの施設では、利用者さん一人ひとりに最適なオムツやパッドを選んで使っていました。アスクルなら商品の比較がしやすく、細かいサイズや吸収量の違いにも対応できたんです。でも今、急いで他のサイトで探しても、同じ商品が見つからない。代替品を試すにも、利用者さんの肌に合わなかったらどうしようと心配で…」
「経理処理が混乱している」
経営者側の悩みも深刻です。
「アスクルは請求書を一括管理できて、月末の経理処理がとてもスムーズでした。今は複数の店舗やサイトからバラバラに購入しているため、領収書の整理だけで何時間もかかっています。介護報酬の請求にも影響が出かねず、本当に困っています」
危機管理としての調達体制見直しを
今回のアスクルのシステム障害は、「一つの仕入れ先に依存するリスク」を浮き彫りにしました。便利で効率的なサービスだからこそ、それが使えなくなったときの影響は甚大です。
介護施設の運営において、オムツや衛生用品は利用者の生活と尊厳に直結する重要物資です。今回の経験を教訓に、以下の対策を講じることをお勧めします:
短期的な対応
- 複数の通販サイトに法人アカウントを作成
- 地域の店舗・業者との関係構築
- 緊急連絡先リストの整備
中長期的な対策
- BCP(事業継続計画)に調達リスクを組み込む
- 在庫管理システムの見直し
- 発注業務の複数名体制・マニュアル化
アスクルの復旧時期は依然として不透明ですが、今回の事態をきっかけに、より強固な調達体制を構築する機会と捉えることが大切です。
介護の現場が安心して利用者ケアに専念できるよう、今できることから始めていきましょう。
最新情報の確認先
- アスクル公式サイト: https://www.askul.co.jp/
- システム障害に関するお知らせページで随時更新情報を確認できます
コメント