戦国時代の籠城戦で何を食べていた？城の食料備蓄と飢餓する兵士たちの実態

籠城戦とは何か

戦国時代の籠城戦は、敵軍の攻撃から逃れるため城に籠もり、敵の包囲に耐える戦術でした。短期間の籠城もあれば、数ヶ月に及ぶ長期籠城も存在しました。しかし、長期化するにつれて深刻な問題が生じました。それが食料不足による飢餓です。

籠城戦における食事は、驚くほど限定的でした。主な食料源は穀物と塩漬けした野菜・魚類でした。

米と麦の備蓄食 城の主食は米と大麦、小麦粉などの穀物でした。保存性が高いため、戦国大名は平時から城に備蓄していました。ただし、兵士全員に十分な量を配給することは難しく、特に籠城が長期化すると配給量は激減しました。

塩漬けと干し物 野菜を塩漬けにした漬物や、干した魚、干し肉などが重要な栄養源でした。これらは数ヶ月保存できるため、籠城戦の備蓄食として最適でした。特に干し魚は蛋白質補給に欠かせない食料でした。

豆類と味噌 黒豆や小豆といった豆類も貴重な栄養源でした。また、味噌は調味料としてだけでなく、栄養価の高い保存食として重用されました。

その他の食料 馬や牛などの家畜も、食料が枯渇した際の非常食となりました。城内で飼育されていた家畜は、最終手段として兵士たちに供給されたのです。

戦国時代の城の規模によって異なりますが、大規模な城であれば相当な量の食料が蓄えられていました。

備蓄の目安 一般的に、大規模な城では数千人の兵士と領民を数ヶ月間養うだけの食料を貯蔵していました。例えば、米を主食とした場合、1人が1日に約1.5合（225グラム）を必要とすれば、5000人の城であれば、1ヶ月で225トン以上の米が必要になります。

有力大名の城では、倉庫に数千俵の米を備蓄することは珍しくありませんでした。しかし、予期しない長期籠城に陥ると、この備蓄も急速に枯渇しました。

備蓄不足の悪影響 織豊時代の記録によれば、籠城戦が想定以上に長引いた場合、城内では深刻な食料不足が発生しました。特に季節による変動も影響しました。冬季の籠城は新鮮な食料の確保が困難でした。

籠城戦が長期化するにつれて、兵士たちは極度の飢餓状態に陥りました。

配給量の段階的削減 初期段階では兵士全員に配給されていた食料も、籠城が長引くと段階的に削減されました。城主の家族や重要な武将には優先的に配給されたのに対し、一般兵士への配給は次第に減少していったのです。

栄養不良と疫病 十分な食料が得られない状況では、兵士たちは栄養不良に陥りました。抵抗力が低下すると、赤痢やコレラなどの感染症が蔓延し、飢餓と疫病の二重苦に苦しむことになりました。豊臣秀次の豊臣城籠城戦でも、飢餓による死者よりも、飢餓に起因する疫病での死者が多かったという記録があります。

兵士の士気低下と脱走 食料不足は兵士の士気を大きく損なわせました。歴史記録には、飢えに耐えられず城から脱走する兵士が続出したと記されています。包囲軍も脱走兵を見て、籠城戦終了の時期が近いことを悟ったほどです。

食料不足は単なる不便さではなく、籠城戦そのものの終焉をもたらす決定的な要因でした。どれだけ城が堅牢でも、食料がなくなれば白旗を掲げるほかありませんでした。

戦国時代の籠城戦は、軍事的な戦術というより、兵站管理の戦いでもあったのです。城主たちが備蓄量を増やし、保存食の確保に心を砕いたのは、籠城戦で生き残るためには食料こそが最大の武器であることを知っていたからです。

歴史学者の研究によれば、戦国時代の籠城戦で投降に至った事例の約70％は、食料枯渇が直接的な原因であったとされています。つまり、敵の攻撃で陥落した城より、飢餓で降伏した城の方がはるかに多かったということです。

戦国時代の籠城戦における食料事情は、歴史小説ではあまり詳しく描かれることのない地味なテーマです。しかし、兵士たちの日常を左右した重要な問題でした。限られた備蓄米、塩漬けの野菜、干し魚といった粗末な食事で、飢餓と戦いながら籠城に耐えた兵士たちの姿は、戦国時代の戦の現実を象徴しています。

戦国時代の籠城戦の真の敵は、敵軍ではなく飢餓であったのです。