高市政権発足と新たな政治構造の誕生
2025年10月21日、日本の政治史上初めての女性首相となる高市早苗氏が第104代内閣総理大臣に指名された。自民党と日本維新の会による新たな連立政権が発足したこの歴史的瞬間に、れいわ新選組の山本太郎代表は国会内での記者会見で、この政権を「悪魔合体」と痛烈に批判した。
山本氏がなぜこれほど強い言葉で新連立政権を批判したのか、その背景にある政治理念の対立と、今後の日本政治への影響についてシラベテミタ!
山本太郎氏の「悪魔合体」発言の真意
衝撃的な表現に込められた政治的メッセージ
会見の冒頭で山本氏は「今から汚い言葉を出しますから、心の準備をしてほしい」と前置きした上で、自民・維新連立を「カレー味のうんこと、もんじゃ味のゲロ。これの悪魔合体」と表現した。一見すると品位を欠く表現だが、この過激な言葉選びには明確な政治的意図がある。
山本氏は「誰がそんなレストラン行くんだよ」と続け、国民にとって選択肢にならない政治勢力の結合であることを強調した。これは単なる感情的な批判ではなく、両党の政策が国民生活に与える影響への危機感の表れなのである。
なぜ「悪魔合体」なのか:3つの重大な理由
理由1:新自由主義路線の極致化
山本氏が最も警戒するのは、自民党と維新の会が共通して持つ新自由主義的な政策姿勢である。過去2022年の会見でも、山本氏は維新を「自民党の悪いところを煮詰めたような」政党と評している。
新自由主義とは、市場原理を重視し、規制緩和や民営化、小さな政府を目指す経済政策の考え方だ。山本氏はこの路線が格差拡大や社会保障の削減につながると一貫して批判してきた。自民党と維新という新自由主義的政策を推進する二大勢力が連立することで、その方向性がさらに加速することを懸念しているのである。
理由2:議員定数削減への強い警戒感
連立合意の中で特に山本氏が問題視したのが、衆議院議員の定数削減である。自民・維新両党は465人の衆議院定数の1割削減を目標に、臨時国会での法案成立を目指すことで合意した。
山本氏は会見で「ややこしいことを言う者たちの数をどんどん減らしていきたいという考え方」と指摘。さらに「ガチ草の根で、ややこしいというパートを担当し続けている『れいわ』ということに関しても、定数削減という部分に関しては、やっぱり影響はあるでしょう」と、自党への影響も認めながら危機感を示した。
議員定数削減は一見すると「身を切る改革」として肯定的に受け取られがちだが、山本氏はこれを「権力の固定化」につながる施策と位置づける。少数政党や草の根からの声が国会に届きにくくなることで、既存の権力構造が強化されると警告しているのだ。
理由3:対米従属の強化への懸念
山本氏は新政権について「対米従属がより強化される」と指摘している。高市氏は安全保障政策において対米協調を重視する立場として知られており、維新もまた安全保障面では日米同盟強化を掲げている。
れいわ新選組は従来から対米自立を訴えており、日米地位協定の改定や辺野古新基地建設の中止などを主張してきた。自民・維新連立によってこうした外交・安全保障政策の転換がより困難になるとの判断が、「悪魔合体」という強い表現につながっている。
「地獄しかない」社会への危機感
国民生活への影響をどう見るか
山本氏は「この先何が待ち構えてますか?それは『地獄しかないんだぜ、カオスしかないんだぜ!』っていう状態です」と述べ、新連立政権下での国民生活への深刻な影響を予測した。
この「地獄」とは具体的に何を指すのか。山本氏の過去の発言や政策主張から読み解くと、以下のような懸念が浮かび上がる:
- 消費税増税や社会保障費削減による生活困窮層の拡大
- 非正規雇用の増加と労働環境の悪化
- 公共サービスの民営化による格差の固定化
- 軍事費増大による社会保障予算の圧迫
「一服の清涼剤」ではなく構造変革を
興味深いのは、山本氏が「私たちは『一服の清涼剤になりたい』なんて思いません。そんなもの、ガス抜きでしかない」と述べている点だ。
野党の一部には「与党を監視する」「批判勢力として存在する」という姿勢も見られるが、山本氏はそうした役割を否定している。「ガス抜きにもさえならないようなことをやったって、しょうがないわけで」という発言は、政治の根本的な構造転換を目指す姿勢の表れといえる。
れいわ新選組の対抗戦略:内と外から政治を揺さぶる
国会内外の両面作戦
山本氏は「国会の中だけではなくて、外も一緒に揺らしてくれということで、前に少しでも進めていく」と述べ、議会内の活動だけでなく、国民運動との連携を重視する姿勢を示した。
これは山本氏が従来から重視してきた「当事者主義」の延長線上にある戦略だ。国会議員だけでなく「この国のオーナーの皆さん(国民)」に訴えかけ、草の根からの政治変革を目指すというアプローチである。
マイノリティの声を国政に届ける使命
山本氏は「マヌケな国会議員と、国会議員を選ぶことに対して危機感が薄い国民。これらの共作によって、国は壊されてきた」と痛烈に批判しながらも、その意識を「この国のオーナーと共有していきながら、日本を立て直していく必要がある」と建設的な方向性を示している。
議員定数削減によって少数派の声が届きにくくなる中で、れいわ新選組は困窮者や社会的弱者の代弁者としての役割をより明確にしていく構えだ。
過去の「悪魔合体」発言との比較
2022年の立憲・維新共闘批判
実は山本氏が「悪魔合体」という表現を使うのは今回が初めてではない。2022年10月には立憲民主党と維新の会が臨時国会で連携することに対しても「最悪の悪魔合体」と批判していた。
当時の発言を振り返ると「新自由主義傾向にあるのと自民党の悪いところを煮詰めたような維新と民主党時代から新自由主義傾向にあった立憲」と述べ、政策的な問題点を指摘していた。
一貫した政治姿勢:新自由主義への対決
2022年の立憲・維新への批判も、2025年の自民・維新への批判も、その根底にあるのは新自由主義への強い反対姿勢である。山本氏にとって、政党の看板よりも政策の中身が重要であり、新自由主義的な政策を推進する勢力の連携はすべて「悪魔合体」なのだ。
この一貫性は、山本氏が党派性よりもイデオロギーを重視する政治家であることを示している。
今後の日本政治への影響と展望
少数与党政権の不安定性
高市政権は衆議院で過半数ぎりぎりの議席しか持たない少数与党政権としてスタートした。自民党196議席と維新35議席を合わせても231議席で、過半数の233にわずかに届かない状況だ。
この不安定な政治状況は、今後の政策運営に大きな影響を与える可能性がある。重要法案の採決では野党の動向が鍵を握ることになり、れいわ新選組のような少数政党の発言力が相対的に高まる可能性もある。
「対決」か「部分連携」か:野党戦略の岐路
山本氏の強硬な批判姿勢は、野党全体の戦略にも影響を与えるだろう。立憲民主党など他の野党が部分的な政策協力を模索する中で、れいわ新選組は明確な対決姿勢を貫くことになる。
この違いは有権者に野党間の違いを明確に示すことになり、2026年の参議院選挙や次期衆議院選挙での争点形成に影響を与える可能性がある。
政治的表現の過激さに隠された本質的な問題提起
山本太郎氏の「悪魔合体」発言は確かに過激で品位に欠けると批判される面もあるだろう。しかし、その表現の奥には以下のような本質的な問題提起が含まれている
- 新自由主義政策の加速による格差拡大への警告
- 議員定数削減による民主主義の後退への危機感
- 既存権力構造の固定化への反対
- 対米従属強化による外交的選択肢の狭まりへの懸念
これらの指摘が正しいかどうかは、今後の高市政権の政策運営を見守る中で明らかになっていくだろう。しかし少なくとも、山本氏は多くの国民が感じている政治への不信感や閉塞感を、独特の表現方法で代弁しようとしていることは確かだ。
政治における「言葉の選び方」と「伝えたい本質」のバランスは常に議論の的となる。山本氏の発言を単に「過激だ」「品がない」と切り捨てるのではなく、そこで提起されている政策論争の中身に注目することが、成熟した民主主義社会には求められている。
自民・維新連立政権の行方、そしてそれに対抗する勢力としてのれいわ新選組の活動は、これからの日本の政治・経済・社会のあり方を占う重要な要素となるだろう。有権者一人ひとりが、政治家の言葉の表面だけでなく、その背後にある政策や理念を見極める目を持つことが、今まさに求められているのである。


コメント