はじめに
2025年、日本政治は激震に見舞われた。創価学会を母体とする公明党が、戦後最長となる自民党との連立政権を解消した。その背景には、政治的な対立ではなく、自民党内の権力構造が急速に変わる中での戦略的選択があった。特に高市早苗の総理総裁への昇格と、小泉進次郎のキャスティングボードの喪失が、連立解消の隠れたトリガーとなった可能性は、これまで十分に検証されてこなかった。
高市早苗総理誕生:公明党が恐れた政治シフト
公明党が連立を離脱したタイミングと、自民党内での高市勢力の台頭は無関係ではない。高市早苗は保守派の代表格であり、その政治的スタンスは公明党が重視してきた「中道性」と相容れない部分が多い。
高市が総理に就任することは、自民党の政策軸が右へシフトすることを意味する。特に以下の点が公明党の危機感を招いた:
憲法改正への積極姿勢:高市は9条改正を含む憲法改正に前向きで、公明党は慎重派。連立を続ければ、この問題で常に党利党略の葛藤に直面することになる。
安全保障政策の強硬化:防衛費増額や防衛装備品の海外供与など、高市政権下での安全保障政策は、平和主義を掲げる公明党のアイデンティティと衝突する。
宗教政策への懸念:高市の思想的バックボーンである日本会議と創価学会の対立構図は、表面化していないが根深い。政権内での実権を握る高市に対し、公明党は創価学会の利益を守れない可能性を認識した。
小泉進次郎の喪失:公明党のパワーシフト
もし小泉進次郎が自民党総裁の座にあったならば、公明党の選択は異なっていた可能性が高い。
小泉進次郎は、現職時代から公明党との関係構築に長けており、党内での「中道派」の筆頭として機能していた。進次郎のキャスティングボード的な存在が、公明党に対して連立継続への誘因を与えていた。進次郎がいれば、党内の強硬派をけん制し、「中道的な政策バランス」を維持できるという信頼感が存在したのだ。
しかし、進次郎が政界引退を示唆すると同時に、高市勢力が力を増す構図が浮き彫りになった。公明党のシンクタンク的な位置づけ、即ち「穏健派の声」を代弁する者の不在が確定すれば、連立のメリットは激減する。むしろ、高市政権への牽制役として野党化による影響力の方が、創価学会の意向反映には有効だと判断したと考えられる。
創価学会の実質的経営判断
公明党の党是は「創価学会の政治部門」である。したがって、党の重要決定は常に創価学会本部の判断を反映している。
連立離脱の背景には、創価学会による以下の計算があったと推測される:
野党化による「ニッチ市場」の確保:高市型の強硬保守政権が誕生する中で、公明党が野党に回ることで「良識の声」としての地位を確立できる。創価学会の平和主義的なイメージと親和性を持つポジショニングが可能になる。
政権内での「使い捨て」化の回避:連立に参加し続ければ、不人気な政策の責任を共有させられるリスクがある。高市政権下での安全保障政策強化や憲法改正に関われば、創価学会の平和メッセージとの矛盾が深刻化する。
次の政権交代への布石:野党化することで、次の政権交代時には「調整役」としての地位を回復できる可能性がある。公明党は常に「キャスティングボード」になりたい政党であり、野党時代こそがその価値を最大化する。
小泉進次郎がいたら?
仮に小泉進次郎が現在も自民党内で影響力を保持していたら、状況は大きく異なっていただろう。
進次郎はポストコロナ政策や新自由主義的な経済改革で、公明党と利益共有の領域が多い。また、彼の「世襲議員でありながらポピュリズムに親和的」というキャラクターは、公明党の支持層である中産階級との接点を作りやすい。
更に重要な点として、進次郎が党内の「高市包囲網」の象徴的存在になりうるという点である。高市の強硬保守路線に対して、進次郎の「自由主義的保守」がアンチテーゼとなれば、公明党は「バランスを保てる連立」として継続判断ができた可能性が高い。
政治的多様性の喪失
公明党の離脱は、単なる「連立解消」ではなく、日本政治における多様性の縮減を意味する。高市政権下での「大きな政府・強い国家」志向は、かつての「小泉型・構造改革」と比較しても、より保守的で一元化された方向性を示唆している。
公明党が連立を離脱したのは、その方向性から取り残されたくないという戦略的判断だったのだ。そして、その判断の前提には、小泉進次郎という「バランサー」の喪失が深く関わっていたと言えるだろう。


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