無名芸人が一夜にして時代の寵児へ
1996年、日本テレビの伝説的な番組『進め!電波少年』で、お笑いコンビ「猿岩石」が社会現象を起こした。猿岩石の有吉弘行と森脇和成の二人は、香港からロンドンまでユーラシア大陸を無一文でヒッチハイクするという過酷な企画に挑戦。
当時22歳だった彼らは、番組側から突然命じられた企画内容に戸惑いながらも、約半年にわたる壮絶な旅に出発した。インターネットもまだ普及していない時代、二人は日本での反響を知らないまま旅を続けていた。
驚異的な人気上昇と推定年収の変化
ブレイク前の年収:推定100万円以下
猿岩石がヒッチハイク企画に参加する前、二人は太田プロダクションに所属する売れない芸人だった。デビュー当時は仕事もほとんどなく、年収はおそらく100万円にも満たなかったと考えられる。当時のお笑い新人の平均的な収入を考えると、月収数万円程度のアルバイト生活だった可能性が高い。
ブレイク後の年収:推定1億円超
ところが帰国後、状況は一変した。森脇和成本人が明かしたところによると、猿岩石として大ブレークした当時、月収が2000万円以上に達したこともあり、年収は1億円を超えたという。
この数字がいかに異常かを示すエピソードとして、当時は給料が手渡しで、伊勢丹の紙袋を二重にしてATMに行き、帯をちぎりながらニヤニヤして貯金通帳に入れていたと森脇は振り返っている。
わずか半年で年収が1000倍以上に跳ね上がったことになる。これはテレビ番組出演、CM契約、写真集や書籍出版、音楽活動などあらゆる方面からのオファーが殺到した結果だった。ヒッチハイク時代を書いた「猿岩石日記」はシリーズ累計で250万部のベストセラーとなり、デビュー曲の「白い雲のように」は、113万枚の売上枚数だった。
人気低迷期:二人の選択
2004年:コンビ解散の決断
しかし、この栄光は長く続かなかった。猿岩石の人気は急速に低迷し、テレビでの露出も激減していった。2004年、二人は猿岩石としての活動を終了することを決断する。
この時期、有吉も森脇も芸能界での仕事が激減し、年収は推定で数百万円程度まで落ち込んだと考えられる。かつて月収2000万円を稼いでいた二人にとって、これは精神的にも経済的にも大きな試練だった。
有吉弘行の選択:芸能界に残る
有吉は芸能界に踏みとどまる道を選んだ。この時期を「干されていた」と本人も語っているが、あきらめずに小さな仕事でもこなし続けた。そして2007年頃から「毒舌キャラ」として徐々に再注目され始める。ゲストに的確なあだ名をつける芸風が受け、徐々にテレビ出演が増えていった。
森脇和成の選択:実業家への転身
一方、森脇は芸能界を離れ、実業家への道を選んだ。その後さまざまなビジネスに挑戦したが、経営は思うようにいかなかった。一度は一般企業にサラリーマンとして勤務した時期もあったという。2015年に芸能界に復帰するが、2年前から俳優業に力を入れ、舞台を中心とした活動を展開している。しかし、かつてのような華やかな仕事とは程遠い状況となった。
2025年現在:天と地ほどの収入格差
有吉弘行:年収推定6億円超の国民的司会者
2025年現在、有吉弘行は日本を代表する司会者・タレントとしての地位を確立している。現在の年収は推定6億円とされる。
テレビのレギュラー番組を複数抱え、CM出演、ラジオ番組のパーソナリティとして幅広く活躍。2021年には元日本テレビアナウンサーの夏目三久と結婚し、プライベートも充実している。ゴールデン帯1時間MCのギャラは80万円ほどが目安とされ、リーズナブルな価格設定ながら出演本数の多さで高収入を実現している。
森脇和成:舞台俳優として地道な活動
一方、森脇和成は2025年現在も舞台俳優としての活動を続けている。猿岩石の人気低迷後は地元広島のローカル番組に出演するなどしていたが、現在は東京を中心に舞台公演に出演している。
収入については公表されていないが、月収はピーク時より3桁分減少したと報じられており、推定で月収数十万円程度と考えられる。年収に換算すると500万円前後ではないかと推測される。
かつて月収2000万円を稼いでいた二人の収入格差は、現在では100倍以上に開いている計算になる。
明暗を分けた要因:芸能界での生き残り戦略
有吉の成功要因:キャラクター転換と継続性
有吉が成功を収めた最大の要因は、自分自身を客観視し、時代に合わせてキャラクターを変化させる柔軟性にあった。かつての「感動の旅人」イメージを捨て、毒舌キャラという新たな武器を手に入れたことで、第二のブレイクを果たした。
また、どんなに小さな仕事でも手を抜かず、芸能界に居続けることを選んだ継続性も重要だった。干されている時期も地道に営業をこなし、チャンスを待ち続けた忍耐強さが実を結んだのである。
森脇の苦戦:選択のタイミングと方向性
森脇は実業家への転身という選択をしたが、これが結果的に芸能界復帰を難しくした。一度業界を離れると人脈が途切れ、再び表舞台に立つハードルは格段に上がる。
さらに、俳優業という新たなフィールドへの挑戦は評価できるが、かつての「猿岩石・森脇和成」というイメージが強すぎて、純粋な俳優としての評価を得にくいという側面もあった。
テレビが作り出した格差
猿岩石という同じスタートラインに立っていた二人の現在の年収格差は、テレビというメディアの残酷さと可能性の両面を象徴している。
有吉弘行は推定年収6億円超の国民的タレントとなり、森脇和成は推定年収500万円程度の舞台俳優として活動している。この1000倍以上の収入差は、一時の人気に頼るのではなく、時代に合わせて自己変革を続けることの重要性を教えてくれる。
『進め!電波少年』のヒッチハイク企画から約30年。二人の人生は全く異なる道を歩んでいるが、それぞれが自分なりの生き方を見つけ、前に進み続けている。この対比は、芸能界で生き残ることの難しさと、人生の選択がもたらす大きな影響を私たちに示している。


コメント